持統天皇の自立性について今日は考えている。政治的にも律令制の本家中国にない太上天皇を作ったり、政治的パートナーを選ぶ様子(藤原不比等)は自分で熟慮し行動する、ただものでない女帝の胆力を感じる。さらに祭儀では、日本の原郷吉野に30回以上行幸をしたり、それも一回は重臣の意見を無視してまで行幸を決行する様子は、自立性とは何かを考えさせられる。宗教的にも夫の天武天皇は従来どおりの埋葬だが、持統天皇は日本で初めて自らを火葬にしている。その意図は不明だが、他者を配慮しつつも私は私という姿は自立とは何かと語っているようだ。
このブログでも何度も触れた、万葉集や百人一首にも取り上げられている有名な一句
春過ぎて夏来たるらし白妙の衣乾したり天香久山
今では、天香久山も藤原京の全体の中に含まれるというのが定説になっているようなので、この句の衣は神事に使う持統天皇の衣のように私には思えて仕方がない(素人のかってな想像)。濡れて太陽を浴びている衣は何を象徴しているのだろうか。
エリクソンの人格形成論を学んでいるので、光と影のように女帝の心中に去来した深い罪悪感を思ってしまう。甥の大津皇子を謀殺したのはほぼ定説だが、そのほかにも高市皇子暗殺説、さらに自分の子の草壁皇子暗殺説までを唱える学者がいるようだ。謀略が渦をまく政治状況なので、誰もそれを完全に否定することはできないと思う。そして、薬師寺などの建立や山田寺を大切にしたり、聖地吉野への行幸を見ると、持統天皇の罪悪感とともに救いも見えて来る。見事に自立的な人生を歩んでいらっしゃるので、病的な罪悪感ではなく深い罪悪感と、それに対する神仏のゆるしを同時に感じるのはへんだろうか。
写真は季節的に夏になるころの天香久山方面から西の畝傍山方面に落ちる入日。持統天皇は入日をどう見ていたのだろう。
女帝の心中を想いつつ 4/10
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森 裕行 | |
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