なんとも私の常識からは規格外のビジネスウーマンの出現である。生まれ故郷の名寄市にUターンして、名寄市を興すために数々の仕掛けを構想し、その実現に向けて奔走する黒井理恵氏のお話を私は驚きを感じながら聴き入った。
9月2日(金)、道民活動センター(かでる2・7)で開催された「北海道青少年育成大会」において、各種表彰や「少年の主張」全道大会の発表の後、事例発表として名寄市在住でnaniroBASE&Labの副所長である黒井理恵氏が「人をつなげて地域を楽しくするスペース『naniroBASE&Lab』」と題して発表された。
※ 講演をする黒井理恵氏です。
まず講師の黒井氏の職業、肩書が凄い!職業として彼女が自己紹介するのが「ワークショップデザイナー&ファシリテーター」、「事業プランナー」、「組織開発コンサルタント」、「いろいろな人をつないで何かを成し遂げるコーディネーター」、「研修講師(自治体、企業)」、「編集者、ライター」といった具合である。そしてその肩書であるがこれまた凄い!それらを羅列すると…、「Nスポーツコミッション(名寄市)事務局次長」、「名寄市高校魅力化コーディネーター」、「naniroBASE&Lab副所長」、「さとのば大学 ファシリテーター」、「(株)DKdc取締役」、「NPO法人森の生活(下川町)理事」、「NPO法人ミラツク理事」、「北海道SDGs推進人材バンク登録中」と、職業、肩書を見るかぎり八面六臂の活躍ぶりが想像される。
そんな多彩な顔を持つ黒井氏であるからいろいろとお話をしたかったろうが、今回はnaniroBASE&Labを中心としたお話に絞って話された。naniroBASE&Labとは、いわゆるコワーキングスペースとして昼は貸事務所的に使い、夜はイベント会場として、単なる貸事務所ではなく、そこを拠点として「名寄市を興す」ためにさまざまな仕掛けを施し、発信を続けているようだ。そのコンセプトは「名寄の街をもっと楽しく」である。
※ naniroBASE&Labの一角だと思われます。(HPから拝借)
そのために例えば、名寄大学の学生に呼びかけ地域と繋がることの楽しさを説き、地域の催しに積極的に参加させ若者に街興しの楽しさを体感させたり、名寄市の二つの高校の統合が話題になるとより魅力的な統合校の在り方を市民と語り合ったり、と多彩な取り組みを展開しているようだ。
黒井氏は名寄市の課題を次のように分析する。◇「まちを盛り上げるのは自分たちである」という認識の不足(行政依存型の思考)。◇活動している人達同士の情報が少なく、改善・成長しない。◇「名寄は楽しくておもしろい街」という感覚が弱い。◇名寄の魅力を知らない市民が多い。◇なにかしたい、と思った人がどこに・だれに相談したらいいのかわからない。
この課題に対して黒井氏は、次のようなことをやりたいという。◇「社会や誰かのために何かしたい」という人と、自分のやりたいことにチャレンジできる人を増やすこと。◇自分の想いに対して正直になり、一歩を踏み出せる人材を作ること。◇それを支える人と人間関係を養うこと。とし、その場を提供するのがnaniroBASE&Labであるという。
※ こちらもnaniroBASE&Labにて微笑む黒井氏です。(HPから拝借)
黒井氏の素晴らしさは、課題解決のための方法論を熟知し、明確にしていることだ。例えばnaniroBASE&Labは交流・観光人口拡大のためでも、商店街の賑わいを創るわけでもなく、街のブランディングを考える場でもないという。目指すは◇街に向けてなにかを始める人を増やすこと。◇お互いの「やりたい」を応援し合う場であることだという。
最後に黒井氏は「幸せの4因子」について触れた。
◇やってみよう(自己実現と成長)
◇ありがとう(つながりと感謝)
◇どうにかなる(前向きと楽観)
◇わたしらしく(独立とマイペース)
お話を伺っていて、黒井氏の溢れる才能、そして「名寄の街をもっと楽しく」したいという意欲を十分に感じさせてくれるお話だった。
取り越し苦労とは思うが、黒井氏の才能や取り組みを名寄市の方々が受け止めることができるかどうか、という点がやや心配になることだった。人口26,000人余の小さな街で果たして彼女の想いを受け止めきれるだろうかと…。特に行政の受け止め方がそれを左右するように気がしてならない。
どうか黒井氏たちと行政が連携を密にして、名寄の街が魅力ある街に変貌することを願いたいと思う。