昨日午前10時から史談会の例会。今回は八代史談会会長の蓑田勝彦先生をお迎えして、「幕末期の熊本藩 横井小楠とその時代」という演目でお話を伺った。膨大な一級史料を読み解かれた上での、出典のはっきりしたいわゆる推論抜きのお話であるから大変説得力がある。
偶然のことだが私はここ一両日、横井小楠にかかわる書籍を数冊読んでいた。それは「酒失事件」や「士道忘却事件」、また「天道覚明論」などがどの様に取り扱われているのかを知りたいが為である。いずれもいささか逃げ腰で詳細には触れていない。偉大な思想家・横井小楠を語る上では、これらの事件について深く論評するのは憚られるのであろう。特に「天道覚明論」の取り扱いなどについては、九割以上の研究者達が小楠のものではないと切り捨てている。まったく根拠のないところであり、「第一人者の某氏がそういっている」などの話になると、もう本を伏せてしまいたくなる有様である。そんな中で一人、地元の堤克彦氏には「天道覚明論の成立に関する歴史的考察」という論考がある。このような優れた論考をベースに研究者は謙虚に「否」を論ずべきではないのか。
このことについて質問をさせていただいたが、まったく一級資料に乏しい事柄についてはコメントのしようがないというお立場であった。
私はこれがまさしく研究者としての真の姿ではないかと感じ入った。推論で構築したいろいろな発言は、誠に説得力を欠いていていて読者に感銘を与えることがない。真の小楠を知るためにも、真実を真実として書く勇気が必要であろう。
私にとっては誠に有意義な時間であった。感謝