漢字検定一級に出るとされる四字熟語が1,112文字有るのだそうだが、そのほとんどは日常使われることがないように思われる。
そんな四字熟語にも含まれないのが、この「急流勇退」である。「細川家家臣略系譜」にはさまっていた古い紙切れの中に、この四字熟語が書かれていた。
そして今一つ、栗本鋤雲とある。自分で書いているにもかかわらず記憶が全くなく、まるで判じ文でこのメモがいったいどういう事なのかとんとわからない。
「急流勇退」を検索するとその意味はすぐ分かった。(官職などをいさぎよく、きっぱりと辞めること。船が急流中で勇敢にさっと引き返すように、仕事の調子のいいうちに、機を見て辞職する意から。)
栗本鋤雲の方は承知しているが、この二つの文言は全く別物と思い込んでいた。いろいろググっている内に、栗本瀬兵衛編「栗本鋤雲遺稿」という刊行物があることを知り、内容を眺めていたらここに「急流勇退」という文章があることが判明した。
その後いろいろ調べていたら、此処に書かれている「急流勇退」の人物が遠山左衛門尉親子であるという事が判った。
あの遠山の金さん(景元)と、その父親の二人である。
改めてこの紙切れが挟まれていたページを眺めてみると、「と」と「ち」の項である。「遠山彦次郎」「遠山三右衛門」家が掲載されていて、なるほどと合点した次第である。両家とも「景」の字を通字としているので、遡ると左衛門尉家と同じルーツに至るのかもしれない。
いつのころ挟み込んだのか判らないが、「お主なかなかやるじゃないか」とにゃりとしたことであった。
「急流勇退」・・・地位に連綿とする政治家や官僚などに、この四字熟語を教えたいものである。