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「おめん」を読む

2021年08月13日 | 絵本
 「顔の形に似せ、顔につけるもの」を「」という。神楽や能、演劇などで着用するが、それはそのまま役割や人格を表わすという意味がある。着用していないのに「面をかぶっているような」と表現されるとき、それは内部を見せない、または大きなギャップがあることを指す。考えると「面」とは凄い道具である。


『おめん』(夢枕獏・作 辻川奈美・絵  岩崎書店) 



 怪談シリーズの「悪い本」「おろしてください」に続いて取り上げる。今年出た新作である。作者はあの『陰陽師』も書いているはず。深く納得するストーリー。ある娘が他の子への妬み、嫉みを心に抱えたときにあらわれた「おめん」。それをかぶり、呪い始めると次々に実現してしまう。「いい気味」と喜ぶ娘は、ある日…。


 目に見えるものと見えないもののつながりが強調される、予想できた筋立てではある。しかしダイレクトな文章と細密な絵が相まって、ちょっとした異空間が展開しているような風景が進む。呪いが最高潮に達したときに、口に出される「どんどろぼろぞうむ でんでればらぞうむ」という語も非常にパワーを感じる。


 どう読むか。これは女声がふさわしい。しかしそうであっても低めがあうだろう。そうなら男声でも可能かもしれない。いや、逆に登場人物と同化しない方が伝わる場合もある。対象は小学校高学年になろうが、感性の違いによって受け止め方は差がでるかな。もしかして悩む子がいたりして…。その経験は大事だ。