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「若返り」という名の衝撃

2021年08月25日 | 雑記帳
 「美酒王国秋田」で当時の蔵元をみていた。周辺地域のことは知っていたつもりだが、「双岩鶴」という見慣れない名前が隣市の岩崎地区にあったと記されている。記憶にない。しかし検索してみると確かに存在しており、今は地元の大きな酒造会社の第二工場となっているようだ。こうした合併等が進んだ昭和後期だ。


 実は我が町にも「西馬音内酒造」という蔵元があり、「若返り」という名前で知られていた。廃業が平成3年なので誌面には確かに載っていた。ただ酒名の由来が記されている文章を見て「えっ」と思った。「大正8年当時、全国的に流行したスタイナッパ氏の若返り法をヒントに命名」とある。いったい何のことだあ。


 今は名前だけ残して、別の酒造会社が限定販売している

 「スタイナッパ」でGoogle検索をかけても出てこない。では、ということで「若返り」や「大正8年」をキーワードに何度かチャレンジするが、たどりつかない。よし、それでは図書館の底力を!と勇んで、郷土史関係や人名事典、秋田の酒に関する文献などを開いてみるが、何一つヒントらしきものも見つからない。


 ちなみに「大正8年」と言えば、かの「スペイン風邪」が猛威をふるった年だった。他の情報に目を奪われがちになる心を抑え、何度かワードを替えて検索する。そして…「若返り法 歴史」でヒットした項目を見ていったら「不老長寿若返り法の研究~国立国会図書館デジタルコレクション」の箇所に発見した文は…。


 「第一節 スタインナツハ氏の若返り手術を受くべきか否か」とある。やったぞ!しかし、そこに書かれていることはなんと!!!!興味のある方は、ぜひ直接資料にあたってほしいが、いわゆる精力増強のために「壮者の睾丸を磨り潰して」云々とあるタマゲタ記述である。これが「全国的に流行した」とは到底思えない。


 もちろん一部嗜好者には興味深かったろうし、酒造会社関係者もかくあったと言うべきか。時代情況を想えば「若返り」という語は、男性生殖器に関する事項になるのも無理ないか。しかし今その事実を吹聴するのは何だか情けないし、恥ずかしい。なんせ我が地元には「若返り饅頭」なる名物商品も作られたのだから…。


 当然、昔あった酒名にあやかったと考えられる