すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

100年後にあってほしい遠足

2022年05月10日 | 絵本
 表紙絵の宇宙飛行船と書名だけで、うきうきするような一冊だ。帯に「2019年は、月面着陸成功50周年記念イヤー」とあり、あのアポロ11号がすぐ瞼に浮かぶ。もう100年経たないうちに実現するだろうか。いやい、や感染症で現実の遠足もままならないし、世界情勢も不安だらけ…そんな気分を吹き飛ばしたい。


『みらいのえんそく』
 (ジョン・ヘア作 椎名かおる・文) あすなろ書房 2019.6




 「つきに ちゃくりく!」から始まるこの物語は、最終の宇宙船シーンを除き、全て月面上で展開される。どこの学級にもいそうな、一人後からとぼとぼついていくタイプの子。お絵描きをしている間に寝てしまい、その間に宇宙船は飛び立ってしまう。「しようがない」と、またお絵描きを始めるその子の周りには…。


 全体的には言葉(文字)が少ない。しかし、絵で十分にストーリーがつかめる。月に住む生物?は登場しても、怖さよりユーモラスさが強いし、ちょっとした心の絆が生まれたりする。これは見入ってくれる一冊だと思う。語る立場として悩むのは、宇宙人の声の調子だ。実際に聞いたことがないので、真似しようがない(笑)。


 作者にとって初めての絵本ということだ。アメリカにも「遠足」という概念があるのかとふと思った。和英辞典をみると、trip、outing、excursionがありどれでもいいようだが、最後のexcursionがふさわしい気がする。意味の中に「脱線」「逸脱」が入っている。遠足はやはり非日常の象徴である。そのことが恋しい。