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本を読んで手にしたものは…

2022年07月04日 | 読書
 久しぶりの藤原和博本だ。このブログでメモを残しているのは5年以上前。2003年に公立中学校校長になり次々に著書を出していた頃、ある程度読み込んだ。同齢であることも一つの刺激となり、「よのなか科」の実践はできなかったが「情報編集力」というキーワードには影響を受けた。それは今にも通じている。


『本を読む人だけが手にするもの』(藤原和博 日本実業出版社)



 「読書」をモチーフにした藤原流の思考法、処世術といった内容であり、特に目新しい提言が多いわけではない。ただ、冒頭にある「私は紙の本も立派なモバイル端末(持ち運びできるデバイス)だとも考えている」という一言は、著者の持つ柔軟性、吸収力そのものだと思われ、それが行為を価値づけると得心した。


 自らの読書遍歴を語った第3章が興味深い。「私は、本を読まない子どもだった。」と始まるこの章では、そのきっかけを「課題図書」だとし、そのせいで「10代から20代の読書習慣を失ったとさえ思う」と振り返っていることは、ややオーバーな表現とはいえ、その危険性は常に孕むと、関係者は気づかなければならない。


 「名作が読書嫌いを生む!?」という一面の真実は確かにある。今は多様な読書推進がなされているが、本離れの懸念は高まる一方だ。「面白い」「必要感のある」という根本的な視点を磨き上げたい。著者は大学時代にある先輩の書棚を見て衝撃を受け、仕事へのきっかけを掴み、現場に入って習慣をつけ、場を拡げた。


 実は私も似たような経験を持つ。冊数だけを言えばかなり近い。仕事関係の図書を貪るように読んだり、一人の作家を続けたり、アウトプットと連動させたり…。質は比べようもないが、読書によって関わりを拡げ、深めた体験は充実していたと振り返られる。もう一歩進めて、何かしらの形にする時期なのかと思う。