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参参参(十一)心の免疫を…

2023年03月19日 | 読書
 免疫力を読書でつけることは可能か…ないとは言いきれまい。


『人生100年、長すぎるけど どうせなら健康に生きたい』
   (藤田紘一郎  光文社新書)

 免疫学の権威でもある著者が前書きで言い切っている箇所が、この新書の肝である。曰く「免疫力は腸で約70パーセント、心で約30パーセントがつくられます」。本の構成は100項目中、食事編として69、生活習慣編として31が記されている。健康オタクとしては、食事編の総括はバランスよく、生活習慣編は自然治癒の強調とまとめたいが、あまりに平凡か。しかし、一つ一つの知識は無駄にはならない。「免疫力というものは、学力と同じです」という一言は結構重い。頑張って勉強しているうちは伸びるけれど、自ら鍛えていくことをやめれば衰える…だそうです。





『あなたのいない記憶』(辻堂ゆめ 宝島社)

 初めて読む作家。最新刊についての書評が面白かったので、その名前が印象に残り、図書館に並んでいるものから一冊借りてきた。「虚偽記憶」をテーマにしたミステリだった。読みやすくページをめくることができたが、少しスピードアップすると視点人物が紛らわしくなる部分もあり、全体として今一つの印象だった。心理学の専門家が「虚偽記憶」現象を解明していく件はなかなか興味深い。加齢によって記憶が曖昧になることと一緒にしてはいけないが、結局人は「思い込む」。作意を持ってそれを利用したことはないが、世の中には似ていることが沢山ある。



『皆様、関係者の皆様』(能町みね子 文春文庫)

 「週刊文春」の連載エッセイでタイトルは「言葉尻とらえ隊」。昨年もこの文章は面白いと思い、少し書き込んだことがあった。しかし、これを一気に70も80も読むにはちょっと圧が強いかな。前書きにあるように「トイレなどに置いておいて気が向いたときにパッと開いたところを読むくらいがちょうどいい」。時事、芸能、政治等々。TV報道、バラエティやネットで発された言葉に鋭く斬りこみ、底にある心理をあぶり出すのが上手い。目配りの広さにも感心する。情報収集の精密さもあり、そこから本質をずばりつく。例えばこの一節のように。「SNSのいちばんの問題は、高め合ってはいけない方向性で人が徒党を組めること。