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とぶことが、生命力

2024年10月29日 | 絵本
 先月末日に読み始め、今月5回つまり6回も取り上げた絵本がある。名作『とべ バッタ』(田島征三 偕成社)だ。秋の定番の一つと言っていいだろう。どこの教室でも、この本を出すと「知ってる」と声を上げる子がいた。しかしそう言った子も含めて、どこでもじいっと絵を見入り、聴き入ってくれる時間が続いた。



 4つのこども園では大型絵本を用いた。著者の絵の迫力を存分に伝えるにはふさわしい。改めてふりかえると、題名の「とべ」には2種類の意味が込められている。最初は、周囲の捕食動物たちの恐怖に負けず、思い切って「跳ぶ」。もう一つは、落下しながら羽根の存在に気づき、それを使って「飛ぶ」ということだ。



 「跳ぶ」は逃げるため、渾身の力を振り絞る。それに目的地はなく、ただ「たかく のぼりつめ」限界をむかえる。しかし、落ちる過程で知った自らの新たな能力の「飛ぶ」は、どんなにみっともなくとも「じぶんの ゆきたいほうへ」行けるのである。「あれちをこえて」着いた、はるか向こうにハッピーエンドがあった。


 シンプルな展開の中に強く伝わってくるのは、やはり「生命力」。これは田島作品に共通する。昨年から読んでいる『つかまえた』も同様だ。この星を征服したような気になっているヒトという種が、実は失いかけているその力は、やはり自然の動植物の中に溢れている。その輝き、煌めき、囁きにもっと目を向けたい。


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