「ふたり女房」澤田瞳子
江戸時代の京都が舞台。
女薬師・真葛がヒロイン。
P55
「確かに医術を学びはしましたが、わたくしは医師ではありませぬ」
藤林家当主である匡(ただす)への気兼ねもあり、当初、彼女は診察を拒んだ。それでも断りきれずに数人を診ると、真葛の評判は瞬く間に洛中に広まった。
P257
「(前略)一向に女医が増えぬのは、我ら男の側にも問題があるのでござろう。何しろ医術を志す女史がいたとしても、それを門下に入れる医師は希でございますからのう。仮に弟子に加えていただけても、そこは厳しい男の世界。よほどの覚悟を据えてかからねば、すぐにはじき出されてしまいますわい」
面白かった。
著者は澤田ふじ子さんの娘。
素質は遺伝しない、環境はあるかもしれないが、本人の実力。
今後要チェックである。
【ネット上の紹介】
吉田山で紅葉を楽しんでいた元岡真葛は、侍同士の喧嘩の仲裁に入ろうとして足を止めた。喧嘩をしているのは武士ではなく、なんとその妻女。相手の武士がおろおろする中、金切り声でまくしたて、あげく夫を置いて去っていったのだ。妻を咎めるどころか、肩を落として見送る夫。真葛は、御典医を務める義兄の匡とともに、残された夫・広之進から話を聞くことに…(表題作)。持ち前の聡明さと豊富な薬草の知識で、女薬師・真葛が、人のしがらみをときほぐす。
「健康で文化的な最低限度の生活」(3)柏木ハルコ
シリーズ3作目。
「生活保護」がテーマ。
ますます、ディープな世界に入っていく。
今回は「家族」について、考えさせられた。
生活保護の申請を受けると、福祉事務所は、その人の資産、収入、申請に至る経緯、健康状態、生活歴、扶養義務者の状況等を調査し、原則2週間以内(最長30日以内)に、保護を開始するかどうかを決定し本人に通知しなければならない。
「保護の補足性」という言葉がある。生活保護は、その人の持つ資産、稼働能力、その他のあらゆるものを活用して、それでもどうしても生活費が足りない場合にその足りない分を補うものであるということ。そして、もし援助できる親族がいれば、そちらを優先して受けるということになっている。
母親が生活保護を申請すると、親族で扶養能力がある者がいないか、調査される。
「扶養照会」、である。
・・・息子から書類が帰ってきた、ぼろぼろに引きちぎられて。
別冊問答集『扶養義務における感情問題』
第1巻・・・帯の文句:「生活保護って何?」
↑カバーを取ると
第2巻・・・帯の文句:「緊迫の[不正受給]篇始動」
↑カバーを取ると
第3巻・・・帯の文句:「切ったんですよ!!親子の縁は!!」
↑カバーを取ると
【ネット上の紹介】
新人ケースワーカーが生活保護に向き合う! 福祉事務所に配属された新人公務員・義経えみるは、ケースワーカーという、【生活保護】に関わる仕事に就くことに。そこでえみるは、生活に困窮している人々を支援することの難しさに直面。悩みながらも、「ちゃんと人の相談に乗れる人間になりたい」と感じ、日々奮闘している。そんな中、日下部さんという4人世帯の担当となったえみるだっだが、なんとそこで、高校生の欣也君が母に内緒でアルバイトをしていることが発覚。アルバイトの収入申告がなされていなかったため、生活保護の「不正受給」となり、欣也君のアルバイト代を役所に返さなければならないことになり!? 果たして、緊迫の【不正受給編】の行方は!? 【編集担当からのおすすめ情報】 各メディアから絶賛の声ゾクゾク! さらに現役のケースワーカーも感嘆の、「新人ケースワーカー奮闘劇」! 3集では、「不正受給」のほかに、「扶養照会」が描かれます。ぜひ、お手に取ってみてください!
「羊と鋼の森」宮下奈都
宮下奈都さんは、私の好きな作家の一人。
本作品も面白かった。
ピアノの調律師の青年が主人公。
「音」を文章でいかに表現するか。
そこが、作家の腕の見せ所。
まるで、聞こえるかのような表現。
お薦めです。
P57
原民喜のことば
「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」
P97
ピアノの基準音となるラの音は、学校のピアノなら440ヘルツと決められている。赤ん坊の産声は世界共通で440ヘルツなのだそうだ。ヘルツというのは1秒間に空気が振動する回数のことだ。数値が高いほど音も高くなる。日本では戦後になるまで435ヘルツだった。モーツァルトの時代のヨーロッパは422ヘルツだったらしい。少しずつ高くなってきている。
【他の宮下奈都作品】
「ふたつのしるし」宮下奈都
「スコーレNo.4」宮下奈都
「よろこびの歌」宮下奈都
「終わらない歌」宮下奈都
「神さまたちの遊ぶ庭」宮下奈都
【ネット上の紹介】
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」 ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。
自分のブログより、チェックするサイトがある。
それは図書館検索サイト。
それが急に、予約しようとしても、「予約カゴ」に入らなくなった。
使えなくなった。
パソコンかソフトがおかしくなったのか?
私の使い方が間違っているのか?
色々考えて、試して、「カードの期限切れか?」、と。
図書カードは、5年で切れるそうだ。
本日慌てて更新した。
つい、カウンターの司書の方に文句を言ってしまった。
「図書館には週末毎週行ってます。どうして期限切れが近づいていると言ってくれなかったんですか?あるいは、メールで早めに知らせてくれなかったんですか?」、と。
自分で気をつければ良いことなんだけど。
図書を借りることで、市民税控除分を、充分取り返している。
ネットで予約した本を、中央図書館から分室に回してもらっている。
様々な労力のおかげで、本を手にすることが出来る。
感謝こそすれ、文句を言う筋合いではない。
ほんの2日間使えなかっただけで、これほどストレスが溜まるのか・・・。
歳をとって辛抱が効かなくなってしまった。
申し訳ない。
ps
以前、本は99%購入していた。
数年前から、図書館で借り、に切り替えた。
成仏した際、遺品整理を考えての事である。
「おひとりさまの最期」上野千鶴子
気になるテーマ。
どのような状態で成仏するのか?
特別養護老人ホームに入るか?
グループホームに入寮するか?
それとも、自宅で死ぬことは可能か?
どの程度、身体能力が失われるのかにもよる。
P21
質問:「あなたは正月三が日をひとりで過ごしましたか?」
この回答になんと前期高齢者の独居男性の10人に6人が「はい」と回答しました。
P22
樋口恵子さんはBBこと「貧乏ばあさん」ということばを造語しましたが、女の貧乏は一生ついてまわります。
P45
年金、医療、介護は、いずれも日本では共済制度、つまり保険によっています。国民年金保険、国民健康保険、介護保険です。介護保険だけ、「国民」とついていないことに注意しましょう。介護保険は最初から加入者を国籍条項で制限しませんでした。
P53
病院では死は敗北ですが、高齢者施設では死はゴールであり、達成。
P95
暮らしとは(1)口から食べて、(2)お尻から排泄して、(3)清潔を保つことの日々の積み重ね。ここから(1)食事介護、(2)排泄介護、(3)入浴介護の「三大介護」が生まれました。家族が支えているのがこの3つの介護なら、この3つを他人さまに支えていただければ、おひとりさまでも家にいられることになります。逆にいえば、介護力がないばかりに、涙をのんで施設や病院に入らなければならなくなるのです。
P213
判断能力を失ったひとに対してその意志決定を法的に代行するのが成年後見です。それには財産管理と身上監護が含まれます。
成年後見には任意後見と法定後見の二つがあります。
P249
「尊厳死」という概念がこわいのは、いつでも「尊厳なき生」より「死」のほうがまし、という考え方にスリップしていくことです。
【ネット上の紹介】
「在宅ひとり死」のススメ。何でもあり、どんな死に方もあり!身近な友人の死を経験して「次はいよいよ私の番だ!」と切実な関心のもとに、医療・看護・介護の現場への取材から得た収穫を、惜しみなく大公開。
[目次]
み~んなおひとりさま時代の到来
死の臨床の常識が変わった
在宅死への誘導?
高齢者は住宅弱者か?
在宅ホスピスの実践
在宅死の条件
在宅ひとり死の抵抗勢力
在宅ひとり死の現場から
ホームホスピスの試み
看取り士の役目
看取りをマネージメントする
認知症になっても最期まで在宅で
意思決定を誰にゆだねるか?
離れている家族はどうすればよいのか?
死の自己決定は可能か?
死にゆくひとはさみしいか?