百醜千拙草

何とかやっています

テニスの天才

2007-09-11 | Weblog

テニスのUSオープン、男子シングルスはロジャーフェデラーが優勝しました。過去二十年近くプロテニスは見ていますが、彼はおそらく最強でしょう。ピートサンプラスがスーパーオールラウンダーとして驚異的な活躍をしました。それまでのテニスでは、ボレーヤーはストロークが弱く、ストローカーはボレーが弱いのが相場で、そうしたプレースタイルの違いが個性となって、興味深い試合が数々ありました。マッケンローとレンドルとか。そのうち、テニスラケットの性能が良くなり、どこからでも正確なハードヒットができるようになってくると、ボレーヤーは不利になってきました。ひたすらベースラインで相手がミスをするまでハードヒットを続けるというスタイルが主流となり、ジムクーリエとかがしばらく一位にいました。それを打ち破ってきたのがサンプラスのスーパーオールラウンダースタイルで、球足の早いサーフィスでは、サーブ&ボレー、遅いサーフェスではグラウンドストロークと使い分け、長らく無敵の座についていました。そのサンプラスに衰えが見え始めたころ、サンプラス以上のオールラウンドテンスで、サンプラス以上のスピードをもって、サンプラスを引退に追いやったのがフェデラーでした。私から見てサンプラスの弱点はバックハンドストロークだと思います。サンプラスの片手打ちバックハンドでのトップスピンに余り攻撃力はありません。あくまでバックハンドは、正確にコートにいれてチャンスを待つためのつなぎのショットでした。両手打ちバックハンドを使うプレーヤはバックハンドでも強打して攻撃することが可能です。片手打ちバックハンドでは体の前方でボールを打つ必要がある上に、両手打ちよりもより大きなテイクバックとスウィングが必要なので、正確に強く打つことが困難なのだと思います。サンプラスのバックハンドトップスピンの打点は、ボールが1バウンドして落ちてくる辺りになるので、どうしてもコートの後方から打つことになり、その点でも攻撃力に劣ります。サンプラスがあと十年若くて、フェデラーと対戦したらどうなるかというのは、とても興味深い仮想です。私はサーブ、ボレー、フォアハンドは互角、バックハンドグラウンドストロークではフェデラーの勝ちと思います。フェデラーのボールの扱いに対するセンスには誰もが舌をまくでしょう。今回の決勝戦の対戦相手の若者、良いプレーをすると思います。よい回転とスピードのサーブ、正確で攻撃的なグラウンドストロークを持っています。しかし、天才のセンスに欠けます。私が天才のセンスを感じたプレーヤーは、フェデラーの他にはマッケンロー、アンリルコント、アンドレアガシ、ピートサンプラスです。いくら試合に勝ってもひたすら正確にボールを返すばかりの壁のようなプレーヤー、レンドルとかナダールとかは、見ていて面白くありません。フェデラーはグラウンドストロークをいろんなタイミングで正確に打つ事ができます。驚く事にバックハンドトップスピンを片手打ちでライジングで打つ事もできるのです。これは相当ボールに対する予測がよくないとできません。私は片手打ちバックハンドのテニスプレーヤーで、バックでライジングのトップスピンを打てる人を他に見た事がありません。ストロークも攻撃的なストローク、守りのストロークを巧妙に使い分けてきます。フォアハンドは体がほぼ真っ正面を向いていても、スゥイングのタイミングを微妙に調節することで、左右に打ちわけることができるようです。こんな打ち方をしたら普通はボールにコントロールも威力もつかないと思います。こういう常人が努力を重ねてもできないことができてしまうところが天才なのでしょう。
  女子テニスは相変わらず面白みに欠けます。ミスが少なく安定している者が勝つ、というテニスでの常識どおりの結果と思います。女子で天才を感じた人は少ないのですが、あえて言うなら、マルチナヒンギスでしょうか。カムバックしてからイマイチですが、強かった時、ライジングの早いタイミングでのストローク、左右に振り回すテニスは女子の中では見ていてなかなか面白いと思いました。歴史的にはビリージーンキングやマルチナナブラチロウ゛ァやトレーシーオースチンとかも比較するべきなのでしょうが、私は余りリアルタイムで知らないので何とも言えません。グラフは勿論好きでした。彼女は殆どあのフォアハンド一本で長期にわたって君臨したのですから大したものでした。
盛者必衰、いずれフェデラーも勝てなくなるでしょうが、それは、彼以上の天才が打ち負かすというよりは、きっと彼の年齢からくる衰えによるものになるであろうと思います。それぐらいフェデラーのテニスは完成度が高いと思います。
コメント
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