一昨日、イランの大統領が国連総会の出席のためにニューヨークを訪れた際、コロンビア大学が大学での講演に招待し、大統領はこれを受けて講演しました。イランは保守派アメリカ人から、テロリストへの物資供給をしている可能性とか、核開発を積極的に進めているとか、ホロコーストを否定しているとか、同性愛者を処刑しているとか、そうした点で近年非難の的となっています。このコロンビア大学でイラクの大統領が講演を行うということに対して、多数の抗議者がデモをし、中には著名な学者まで交じって抗議を行ったというニュースを聞きました。民主主義の根本をなす言論の自由をこの人たちはどう考えているのだろうと私は思ったのでした。(もっともデモをするのも表現の自由の権利の内でしょうが)いったいこのデモ隊の人の何人が、直接イラクの大統領からこれらの疑念についての説明を聞いたことがあるのでしょう?ほとんどの人がマスコミの偏った情報に依存して、判断を下しているのではないでしょうか。アメリカは日本以上に政治的圧力によるマスメディアのコントロールが激しい国です。マスコミの言うことの半分は嘘ではないにしろ、かなり偏った報道のされかたがされます。そういう情報にうっかり乗せられて、イランは即ち悪い奴、悪者は問答無用とばかりの単純かつ感情的な価値判断をしているようにみえるプロテストの人々は、ちょっと、「たち」が悪いと思います。彼らは自分は「正しく」イランは「間違っている」と信じているようです。その信念は、いかなる確固とした基盤に基づいているというのでしょう?マスコミの報道などでしか間接的に知らないイランに対して判断に確固とした基盤など持ちようがありません。また、アメリカ軍はイランイラク戦争ではイラクに味方してイランの攻撃を援助したこと、そして今回のイラク戦争や過去のベトナムで多数の一般市民を殺しきたこと、またアメリカは核爆弾を人間に対して用いた唯一の国であり、ホロコーストなみのジェノサイドと批判されてきたてきたこと、こういったことをこの人たちはどれだけ十分ふまえた上でイランに対して意見を言っているのでしょうか?だからこそ「たち」が悪いと思うのです。そんな中で、イランのリーダーと直接、対話する機会を作ろうとしたコロンビア大学は大学の社会的使命を果たそうしたのだと思います。ニューヨーク市のリベラルアーツのアイビーリーグ大学という立場としては、当然の行動であると思いますし、それを企画、主導した大学関係者の英断を私はたたえたい気持ちです。国どうしの交際には、こういう話合いを通じて理解を深め、そして慎重に判断を下していくのが、何事にも重要であると私は思います。しかるに、このプロテストでの「自分たちは正しい」と無批判の信仰を持っているらしい人々の、問答無用とばかりに対話を阻止しようとする行動は、私から見ると野蛮であるばかりでなく、その無批判の信仰が恐ろしく見えます。プロテストの中にはイラン大統領をヒトラーに例えたアジ看板もありました。ヒトラーは独裁者でしたが、その独裁を支持したのは民衆であったことを忘れてはなりません。民主主義国家が選挙によってヒトラーの独裁制を採択したのです。衆愚政治といいますが、民衆が良い判断を下す能力がなければ、民主主義は暴走する可能性があります。今回の抗議行動、そして政府によって洗脳されてきたアメリカ一般人の無根拠な信仰のレベルを考えると、こうしたエリート大学が積極的に社会に介入し、社会の木鐸たる役割を果たすべき時勢なのではないかと思います。人間は感情的な動物であり、感情は常に理性に勝ります。社会の知と理性の中心たるべき大学の行動が一般市民の感情の暴走のブレーキとなることを私は望んでいます。衆生無辺誓願度、これがこの市場主義で荒らされた世の中で大学の社会に持ち得る究極に使命ではないでしょうか。(とりわけ、マスコミがとっくの昔に木鐸であることをやめてしまい、娯楽産業兼洗脳集団と化してしまった現在では)
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