百醜千拙草

何とかやっています

ビルマの問題は地球の問題

2009-08-14 | Weblog
約二年弱前、ビルマの政府がその軍事力で、民主化運動を暴力的に制圧しようとした時の話を書きました(僧侶に向けられた銃)。そんな恐怖政治を行う軍事政権下のビルマで、スーチーさんは、民主化運動のアイコンです。彼女が14年という期間、軟禁下におかれ、軍事政府から目の敵とされてきましたが、今回、軟禁期間の終了を目前にして、許可なくアメリカ人と会ったという罪で有罪となり、さらに軟禁刑の決定が下されました。
 この手の政治的意図での不当裁判は、日本でもありますが(最近では、政治言論で政府批判を続けていた植草教授を狙っての犯罪のでっちあげ、その上告棄却がありました。また、その他多くの警察と司法がグルになっての冤罪は後を絶ちません)、今回のビルマの事件も余りに意図があからさまなので、諸外国の強烈な非難を浴びています。
 状況的には、別にスーチーさんが意図的にアメリカ人と会おうとしたのではなく、自宅横の池を泳いで来たアメリカ人を保護したのを咎められたということです。そもそも、軟禁監視下にあるはずなのに、アメリカ人が池を泳いでやってきてスーチーさんに会えるということ自体が怪し過ぎます。このアメリカ人も禁固7年の判決を受けたそうですが、どこまで本当なのか怪しいものです。あるいはスーチーさんの犯罪をでっちあげるためにビルマ政府に雇われたのかも知れません。
 こうして、北朝鮮と同じように、国際社会から非難を浴びて、どんどん孤立していくビルマ政府は、どんな長期的展望を持っているのでしょうか。権力側の人間の利益さえ確保できれば、誰が何を言おうと、ビルマの国民がどうなろうと、知った事ではない、そして稼げるうちに稼げるだけ稼いで、ヤバくなったらトンズラしよう、そう思っているとしか考えられません。(書いていて、過去数代の自民党総裁の顔が浮かびました)また、有識者によると、中国がビルマ沖の天然ガスや石油を欲しがっているので、中国はビルマ軍事政府側に立ってくれるという計算があるそうです。その間にビルマは北朝鮮の協力で核技術の開発を秘密裏に行っているという話もあり、ビルマ政府はこれまで同様、軍事力を頼んで、諸外国を牽制し、ビルマ国民をコントロールしようとしているようです。北朝鮮がオウム真理教団とすれば、ビルマはまるで暴力団ですね。
 世界の国々が民主主義に向かって少しずつ進歩して、人類の幸福を実現しようとしてきました。民主主義はおそらく、現時点では、最適の政治形態でしょう。民主主義の後にもっとよい政治形態が現れるかもしれませんが、それには、まずは民主主義を実現する必要があると思われます。自己利益のために、そのような大きな視点を持てないビルマ軍事政府は、困り者です。サダムフセインがどのようにして殺されたか、覚えていないのでしょうか?あるいは、アメリカはブッシュからオバマに替わったし、ビルマの石油資源にアメリカが手を出すわけでもないから、外国が内政干渉してくる可能性はない、とタカをくくっているのでしょうか?
 とりわけ、スーチーさんの軟禁に関して、何年も前からビルマ政府の非難を続けてきた、近隣の東南アジア諸国で形成するASEANの失望は大きいです。大国中国がその経済力と国力を増しつつある状況で、東南アジア諸国は団結する必要があります。なのに利己的なビルマ政府が、大きな視点からものを見る事ができずに、皆の足を引っ張っている、そんな状況のように思います。
 学習院での講演で、人間第一主義/ヒューマニズムのことを、夏目漱石は、国家主義と対比させて「私の個人主義」と呼びましたが、ビルマ政府のやっていることは国家主義でさえなく、ただの利己主義であります。(また、ここ数代の自民党総裁の人々の顔が浮かびました)世界は過去の過ちから学んで、ヒューマニズムの実現という方向へと進化してきました。ビルマ政府が世界や歴史から学ぼうとせず、スーチーさんをはじめとするその国民を武力でコントロールし続けていることは、世界の我々も含む地球市民への挑戦でもあります。地球は一つであり、地球に住む住人は、地球を全員にとって住み易い場所へと改善していくプロジェクトの共同参加者でもあります。だから誰であれ、地球に住んでいる人間である以上、ビルマ軍事政府の横暴を見過ごすべきではないと私は思うのです。
 Avaaz.org ビルマの市民運動サポート
コメント
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