7月4日はアメリカ建国記念日でした。日本と違ってそもそも寄せ集めの多民族国家であり、州の集合体であるアメリカでは、国民の愛国心を高める行事というものに熱心です。アメリカ軍兵士はヒーローである、政府はことあるごとに国民に思い込まそうとしています。7月4日は各地でコンサート、行事、花火などが催され、星条旗のペイントを顔に施し、自由の女神の冠を着けて人々は建国を祝います。私は、そういう人々を見る度に、アメリカの戦争を素直に祖国を守る聖戦だと信じて疑わない人々のナイーブさに気が滅入るのです。戦時中、一般国民はコントロールして利用するものだと考えていた大本営の軍部のエリート意識、それに騙されて、「お国のために」と死んでいった若者、関東軍の軍部が真っ先に逃げ出すために満州へ侵攻するソ連軍の戦線の最前線におとりとして置き去りにされた入植者。日本人は政府が国民をどのようにコントロールしてきたか身に染みて知っています。一方、多くの一般アメリカ人は知りません。
アメリカ建国記念日の全国的名物となったのが、コニーアイランドのNathan'sのホットドッグの早食い競争です。Nathan'sのホットドッグは結構、塩っからいもので、これは普通の人なら二つも食べれば、満腹となるようなシロモノですが、一昨年まで、ホットドッグ早食い競争で、彗星のように現れて、6連覇を果たした、「ツナミ」こと、タケルコバヤシさんはあの細い体で、約六十個余りを十分余りで食べるというカミカゼ的奇跡で世界の人々を驚嘆させました。そのコバヤシさんは、どうも早食いプロになったようで、コニーアイランドホットドッグ早食いを主宰している「Major League Eating」の規制のために、今年は参加することができなかったようです。事件は、今年のチャンピオンのChestnut氏が54個のホットドックを平らげて優勝を決めた、その時に起こりました。参加拒否の規制に反対して、コバヤシさんと彼のファンが作った「Free Kobi」と書かれたTシャツを着て、ステージに登ろうとしたコバヤシさんを止めようと警備の警察がコバヤシさんを逮捕したのでした。罪状は、立ち入り禁止違反、公務執行妨害、逮捕に抵抗した、というものだそうです。「彼に喰わさせろ!」という熱いファンの声の渦巻く中、コバヤシさんは警察に連行されました。昨年優勝を競い合ったChestnut氏は、どうもこの辺の事情も、逮捕されたことも知らなかった様子で、「コバヤシが本当の男なら、なぜステージに現れないのだ」と挑発したとのこと。
この事件、ちょうど一年前ぐらいに、ケンブリッジ警察がハーバード大の著明な黒人(実は黒人と白人の混血)教授を自宅で逮捕して、全国的な問題になったという事件を思い出させます。その時に書き留めた事件は下のようなものです。
私も、ケンブリッジ警察のとった行動は愚かな行動であると思います。逮捕理由が「Disorderly conduct」というわけですから、つまり、しかるべき罪状なしに逮捕したということです。近所の人が、自宅の鍵が開かないので、ドアをこじ開けようとするゲイツ教授を見て、家屋に侵入しようとしている怪しい男がいると勘違いして、警察に通報した、というのが事件の発端です。ですから、その怪しい男が、実は、その家に住んでいる住人であるということが明らかになった時点で、警察は「そうですか」と引き下がれば済んだことです。それを警察という権力のもとに、一般住民であるゲイツ教授を、気に食わない対応をしたからと言って「風紀を乱した」という罪状で、逮捕したのですから、これはいけません。ゲイツ教授の立場になって、ちょっと考えてみれば、この逮捕が如何に不当なものか、彼が警察を告訴するといっている気持ちもわかるというものです。
その後、オバマがケンブリッジ警察の対応を批判したこともあって、ケンブリッジ警察側は感情的になり、(人種偏見に基づく不法逮捕ではないと)自らの正当性を主張。その収拾を図るため、オバマが当事者をホワイトハウスに呼んで、バイデンと四人でビールを飲んで、仲直りを演出することになったという事件でした。
今回のタケルコバヤシさんの事件との多少の相似性を私は感じます。罪状を見れば、これが手錠をかけて逮捕するような事件でないのは明らかだと思うのです。警備をしている警察には、おそらく、人種偏見があり、チャンスがあれば権力を使ってみたいという子供じみた虚栄心みたいなものもあったでしょう。
ホットドック早食いコンテストを主宰したMajor League Eating側に何らかの意図があったかどうかは分からないですけど、アメリカの建国記念日の伝統であるコンテストに、例えホットドッグ早食いとは言え、日本人コンテスタントが過去6連覇を果たしたという事実に、強いアメリカのプライドが深く傷ついたというのもあり得るのではないかと思うのです。
ホワイトハウスでのビールでオバマは人種問題のコントロールを図ろうとしました。その時にオバマが選んだビールはバドワイザーです。ビールの銘柄の選択にも緻密な計算があります。国民はオバマの何気ない一挙動の裏にも思想や本性を読み取ろうとします。国民の気分にアメリカ政府は異常なぐらい敏感です。ならば、アメリカの建国記念日に行われる名物コンテストで、日本人が六連覇したという事実を、政府はどう受け取っていただろうか、と想像するのです。
「建国記念日はアメリカ国民の愛国心を高め、アメリカのプライドを確認し、兵士となってアメリカの利益のために身を捨てても良いと思うような熱い愛国者を作るための行事である、であるのに、第二次大戦の敗戦国からやってきた小柄な日本人に、二倍の体格のアメリカ人コンテスタント相手が6連敗を喫する、というのは、アメリカ人の愛国心を鼓揚する上で極めて不都合だ、何とかしろ」そんな命令が密かにペンタゴンあるいはホワイトハウスあたりから、コニーアイランドに伝達されたのではないか、と勘ぐったりするのです。その結果がコバヤシ選手の出場拒否ではなかったのか、と思ったりするのですけど。ちょっと、穿ち過ぎでしょうかね。
訂正。
新聞によると、コバヤシさんは2006年までの優勝者で、2007年に顎関節症を煩ってから、Chestnut氏に王座を明け渡したそうです。昨年に初めて敗退したと思ったのは、私の勘違いでした。今年はMajor League Eatingとの契約内容が厳しすぎて出場できなかった由。
アメリカ建国記念日の全国的名物となったのが、コニーアイランドのNathan'sのホットドッグの早食い競争です。Nathan'sのホットドッグは結構、塩っからいもので、これは普通の人なら二つも食べれば、満腹となるようなシロモノですが、一昨年まで、ホットドッグ早食い競争で、彗星のように現れて、6連覇を果たした、「ツナミ」こと、タケルコバヤシさんはあの細い体で、約六十個余りを十分余りで食べるというカミカゼ的奇跡で世界の人々を驚嘆させました。そのコバヤシさんは、どうも早食いプロになったようで、コニーアイランドホットドッグ早食いを主宰している「Major League Eating」の規制のために、今年は参加することができなかったようです。事件は、今年のチャンピオンのChestnut氏が54個のホットドックを平らげて優勝を決めた、その時に起こりました。参加拒否の規制に反対して、コバヤシさんと彼のファンが作った「Free Kobi」と書かれたTシャツを着て、ステージに登ろうとしたコバヤシさんを止めようと警備の警察がコバヤシさんを逮捕したのでした。罪状は、立ち入り禁止違反、公務執行妨害、逮捕に抵抗した、というものだそうです。「彼に喰わさせろ!」という熱いファンの声の渦巻く中、コバヤシさんは警察に連行されました。昨年優勝を競い合ったChestnut氏は、どうもこの辺の事情も、逮捕されたことも知らなかった様子で、「コバヤシが本当の男なら、なぜステージに現れないのだ」と挑発したとのこと。
この事件、ちょうど一年前ぐらいに、ケンブリッジ警察がハーバード大の著明な黒人(実は黒人と白人の混血)教授を自宅で逮捕して、全国的な問題になったという事件を思い出させます。その時に書き留めた事件は下のようなものです。
私も、ケンブリッジ警察のとった行動は愚かな行動であると思います。逮捕理由が「Disorderly conduct」というわけですから、つまり、しかるべき罪状なしに逮捕したということです。近所の人が、自宅の鍵が開かないので、ドアをこじ開けようとするゲイツ教授を見て、家屋に侵入しようとしている怪しい男がいると勘違いして、警察に通報した、というのが事件の発端です。ですから、その怪しい男が、実は、その家に住んでいる住人であるということが明らかになった時点で、警察は「そうですか」と引き下がれば済んだことです。それを警察という権力のもとに、一般住民であるゲイツ教授を、気に食わない対応をしたからと言って「風紀を乱した」という罪状で、逮捕したのですから、これはいけません。ゲイツ教授の立場になって、ちょっと考えてみれば、この逮捕が如何に不当なものか、彼が警察を告訴するといっている気持ちもわかるというものです。
その後、オバマがケンブリッジ警察の対応を批判したこともあって、ケンブリッジ警察側は感情的になり、(人種偏見に基づく不法逮捕ではないと)自らの正当性を主張。その収拾を図るため、オバマが当事者をホワイトハウスに呼んで、バイデンと四人でビールを飲んで、仲直りを演出することになったという事件でした。
今回のタケルコバヤシさんの事件との多少の相似性を私は感じます。罪状を見れば、これが手錠をかけて逮捕するような事件でないのは明らかだと思うのです。警備をしている警察には、おそらく、人種偏見があり、チャンスがあれば権力を使ってみたいという子供じみた虚栄心みたいなものもあったでしょう。
ホットドック早食いコンテストを主宰したMajor League Eating側に何らかの意図があったかどうかは分からないですけど、アメリカの建国記念日の伝統であるコンテストに、例えホットドッグ早食いとは言え、日本人コンテスタントが過去6連覇を果たしたという事実に、強いアメリカのプライドが深く傷ついたというのもあり得るのではないかと思うのです。
ホワイトハウスでのビールでオバマは人種問題のコントロールを図ろうとしました。その時にオバマが選んだビールはバドワイザーです。ビールの銘柄の選択にも緻密な計算があります。国民はオバマの何気ない一挙動の裏にも思想や本性を読み取ろうとします。国民の気分にアメリカ政府は異常なぐらい敏感です。ならば、アメリカの建国記念日に行われる名物コンテストで、日本人が六連覇したという事実を、政府はどう受け取っていただろうか、と想像するのです。
「建国記念日はアメリカ国民の愛国心を高め、アメリカのプライドを確認し、兵士となってアメリカの利益のために身を捨てても良いと思うような熱い愛国者を作るための行事である、であるのに、第二次大戦の敗戦国からやってきた小柄な日本人に、二倍の体格のアメリカ人コンテスタント相手が6連敗を喫する、というのは、アメリカ人の愛国心を鼓揚する上で極めて不都合だ、何とかしろ」そんな命令が密かにペンタゴンあるいはホワイトハウスあたりから、コニーアイランドに伝達されたのではないか、と勘ぐったりするのです。その結果がコバヤシ選手の出場拒否ではなかったのか、と思ったりするのですけど。ちょっと、穿ち過ぎでしょうかね。
訂正。
新聞によると、コバヤシさんは2006年までの優勝者で、2007年に顎関節症を煩ってから、Chestnut氏に王座を明け渡したそうです。昨年に初めて敗退したと思ったのは、私の勘違いでした。今年はMajor League Eatingとの契約内容が厳しすぎて出場できなかった由。