百醜千拙草

何とかやっています

怪しいビジネス、ドルの崩壊、マイナス能内閣

2010-12-03 | Weblog
11/25号のNatureの広告に眼が止まりました。Victor Advanced Research Initiative (VARI)というニューヨーク州のロッチェスター付近の片田舎にある施設の広告で、その施設のメンバーシップを15000 – 25000ドルで売り出しています。どうもこの施設は細胞などのImagingを得意にしているBrian Bennettという人が創始者のようで、そういう設備や技術のない人に実験サービスを提供するというアイデアのようです。研究者はこの施設まで実験サンプルを持って行き、トレーニングの行き届いたPhDが主にイメージングの実験を行うということです。メンバーシップを買うと、送迎やホテルの手配をしてくれて、近所のゴルフ場のメンバーシップ、スパやサロンのサービス、ワイントレイルの入場パスポートのおまけなどなどの特典がついてくるということだそうです。要は、誰かに実験をやらせて、その間に、ゴルフをしたり、スパでリラックスしたり、ワインを楽しんだりしている間にデータが出るという話です。ま、アカデミアで乏しいグラントをやり繰りしているような人間には関係ない話ですが、利用者は本当にいるのでしょうかね。メンバーシップはそれほど高いものではないでしょうが、加えて各サービス、宿泊、いろいろに加算されていくでしょうから、かなり高額の実験になると思います。そもそも金にならない基礎実験にそんな金をつぎ込める人はどんな人なのかな、と不思議に思います。大企業でそれだけの金を出せるところなら、社内に既にイメージングの設備ぐらいあるでしょうし。その設備がないような小さなバイオテクなら、こんなムダ使いをしていたら半年ももたずに潰れるでしょう。これがとてもビジネスとしてやっていけるとは思えないのですが、もしやっていけるとしたら、そこに何らかの真っ当出ない金が流れ込むような仕組みがあるのでしょうね。
 あと、この号で目立った記事は、ガン抑制遺伝子p53を欠く肺がんをマウスで誘発したあと、p53を再発現させてやったら進行したガンに限って退縮をきたす、という二報、あと脳組織と血液系の間にはバリアーがあって分子の交通は制限されているわけですが、その脳血液関門の機能にpericyteと呼ばれる細胞が重要な働きをするというのが二報でていました。Pericyteは最近、注目をあびている細胞で、普通、血管に寄り添うようにして張り付いている線維芽細胞の一種ですが、その機能については不明な部分が多いものです。またpericyteは血球系細胞や筋肉細胞や骨をつくる骨芽細胞に分化するstem cellもどきの機能をもつとも言われています。そういえば、線維芽細胞がiPSを経ずに比較的容易に血球になるという報告もこの号にでていましたから、線維芽系細胞は元々フレキシブルな細胞なのでしょう。Nature MedicineにはALK2を介したBMPシグナルによって血管内皮細胞が線維芽細胞の一種である骨芽細胞に分化するというレポートもありました。また血球系細胞も線維芽系細胞にも分化できるようですから、成人の細胞分化というものは、昔に考えられていたようなrigidなものではないようです。

さて、アメリカでは昨日の株式市場は高値で開いてその後は、穏やかに推移していましたが、昨日、The Federal Reserveは、経済危機のときに色々な形でなされた救済ローンに関する情報を情報公開を決めた判決に従って、公開しました。これによって、経済危機の程度は以前推測されていたよりも、酷かったことが明らかになりました。シティーグループを始めとする18の金融機関が合計、$9 trillionという巨額の融資を受けており、これらの金融機関の内情の劣悪を暴露する情報です。この情報公開が、既にバブル気味になりつつあるアメリカ株式市場の暴落の誘い水となるのではないかと心配している人もいます。事実、アメリカでの雇用状況はまだまだ悪く、リーマンショックからの株式の回復ほどには実質経済は改善していないワケですから、遠からず株式市場がクラッシュするのは間違いないでしょう。ヘッジファンドは金融株を放出し出していましたし、中国とロシアが貿易にドルを使わないという決定はつい先日ありました。アメリカ通貨、即ちアメリカ資本主義に基づくアメリカ世界制覇の終焉の兆しをそれぞれ感じ取っていたということです。一方、日本は酷いものです。民主党がヨタヨタしている間に、郵政見直し法案の審議はどんどん後回しにされ(郵政民営化による金のアメリカ金融機関への流出阻止策がとられない)、TPPという日本には百害あって一利なしの協定に安易に乗ろうとし(アメリカ金融機関に日本経済を荒らされる上に、日本の保護産業を壊滅させる)、崩壊しつつあるアメリカ覇権主義を捨て身で支えようとしています。 一方、他の国々はソクサクと身支度して、ドル崩壊後に備えて準備しはじめています。日本と言えば、これまでも散々搾り取られて来たのに、まだまだ、自国を犠牲にして死にかけの宗主国アメリカに忠義立て、これが武士道、玉砕精神というものですかね。(そういえば、ブッシュの前でプレスリーの物まね芸をして、ブッシュのポチと呼ばれたヤクザもしましたね)ご免こうむりたいです。
 この辺の世界経済におけるドルに関する解説は金子勝さんのブログを参照下さい(http://blog.livedoor.jp/kaneko_masaru/archives/1341059.html)。
 それにしても、この危機に際して、現政権がやっていることは、全く逆です。もうドル崩壊が始まりつつあるのに、日米同盟だのTPPだのと東の方ばかりを向いて、これからは、最も大切にしないといけないアジア諸国にはケンカを売らんばかりです。能力ゼロが無能と呼ぶのであれば、能力マイナス値の今の内閣を何と呼べばよいのでしょうか。
コメント
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