前回の続きのようなものですが、先日の「内田樹の研究室」の「格差と若者の非活動性について」というエントリーを読んで、そこに引かれているマルクスの「万国のプロレタリア、団結せよ」という言葉に注意を引かれました。
マルクスの思想的天才性は、彼が社会のラディカルな変革は「なによりもまず弱者たちが連帯し、団結するところから始めなければならない」ということを直観したこと、最初のスローガンに「戦え」ではなく、「連帯せよ」を選択した点にあると私は思っています。
今の日本社会でこの言葉ほどrelevantな言葉はないと私は思います。プロレタリアとは現在日本社会で役人でもなく大企業の役員でもないかつては中流と言われた9割の日本国民のことです。団結すること、連帯すること、上からの洗脳教育ではなく、ボトムアップで人々の意識を共有することが大切だと私は思います。
「人間の絆」という小説の「絆」は、原題では「Of Human Bondage」で、Bondageという言葉は「絆」というよりは、普通は「束縛」という意味で使われるのだという話を最近、昔のひろさちやさんの本で読んだところでした。電通が震災にあたって「がんばろう日本」とか「絆」とかいう言葉をまき散らせて、責任所在を誤摩化して国民の注意をそらそうとしてきました。彼らの使う「絆」という言葉の意味は、奴隷を繋ぐ鉄の鎖、束縛の縄という意味なのです。大多数の一般国民が「絆」という言葉から思うのとは異なる意味を持っているのです。対して、「連帯」、「団結」とは鉄の鎖で繋がれるのではなく、腕と腕を自らの意志で組みあわせることであると私は思います。
それで、ふと思いついて、「インターナショナル」の歌詞を読み直してみました。私はこの歌はソビエトの歌だと思い込んでいたのですが、実はオリジナルはフランスの歌だったのですね。日本語歌詞に複数あるようで、二つ見つけました。
立て飢えたる者よ いまぞ日は近し さめよ我が同胞 暁は来ぬ 暴虐の鎖 断つ日 旗は血に燃えて海をへだてつ 我ら腕結び行く いざ闘わん いざ奮い立て いざ インターナショナル我らがもの
立て呪われしもの 立て飢えたるもの 正義の炎は今こそ燃ゆる 過去をば捨てて 奴隷よ 立て立て 世はくつがえる 無より全てに この戦いに集えよ 明日は インターナショナル我らがものよ
一般人たるわれわれは自覚のあるなしにかかわず、現代社会では、飢えたるものであり、呪われしものであり、奴隷です。団結し、暴虐の鎖を断つために、闘う日が近づいているように思います。
「全共闘世代」の後の世代は「しらけ世代」といわれました。全共闘世代だった悪徳弁護士とか空きカンとかが与党になって権力を手にした瞬間に、すっかり体制側に寝返って、民衆の敵となりました。インターナショナルも歌われなくなって久しく、しらけ世代以後は、世界や社会からすっかり関心を失い、自分の狭い世界でに籠って、団結とか闘争とかいう言葉は格好悪いモノと冷ややかに眺めてきました。そして、ついにそのツケが回ってきた、そんな気がします。
インターナショナルが再び国民にrelevantになってきたことは喜ぶべきか悲しむべきか、いずれにせよ、闘争は避けて通れないだろう、そんな気がします。
もう一つ、内田樹の研究室の最新のエントリーから、TPPまたは自由貿易の本質をついたエントリーの中の引用を引用します。TPPをこのように大きな視点から理解しようとする議論は少なく、極めて有用だと思います。あいにく日本政府やマスコミは、長期的かつ広い視点で客観的に物事を考えて自分で決定するという本来の機能を決定的に欠いていて、飼い主の投げるものは何でも条件反射的に走って取りにいってしまうという大脳皮質壊死状態です。連中を最終的に動かせるのはなにより一般国民の団結と連帯しかないと思います。ともあれ、原文を是非、ご一読ください。
「完全雇用は自由貿易にもまして第一の優先目標である。完全雇用を達成するために輸入制限の強化が必要であれば、不幸なことではあるが、それを受容れなければなるまい。」(100頁)
続けて下村はこう書く。
「自由貿易とはそういうものである。決して、神聖にして犯すべからざる至上の価値ではない。
強大国が弱小国を支配するための格好な手段でもあることをもっとハッキリと認識すべきだ。」(100頁)
TPPとは、アメリカや日本の資本家が、日本の大多数の中小企業、公益産業、農業を犠牲にして、それらに就く人々をカネの奴隷にすることによって、一人勝ちするための謀略であると私は思います。格差を広げ、カネによって少数の人間が大多数を支配できるようにするシステムだと思います。導入されれば、早ければ数年で日本の社会はトコトン荒廃してしまうでしょう。
ところで、ボストンでの格差反対プロテストでの集会で、この週末の土曜日、御年83歳のチョムスキーが講演予定です。どんな話をするのか楽しみです。