百醜千拙草

何とかやっています

シンポジウム

2011-10-28 | Weblog

ちょっと前、自分の研究分野外の小さなグラントの募集を見て、応募してみようと、たまたま別の目的で作った手持ちのマウスを使った研究計画を立て、応募のための抄録を書き終えたところで、友人からメール。最新号のCellにそのアイデアは論文になって出ていますよ、とのお知らせ。見てみると、なるほどその通り、もともと彼らのグループの以前の論文を読んで思いついたことなので仕方ありません。彼らはステムセル、ガン研究者なので、この論文で扱っているような代謝に関しては素人だから手を出さないだろう、との考えが甘過ぎました。一方、まだグラントの抄録を書いただけの段階で論文が出てくれたので、傷が浅くて済みました。私も代謝は素人に近いですし、加えて彼らのようなリソースも人もカネもないわけで(だからグラントに応募しようと思ったのですけど)、うっかり同じ土俵に上がったら、一発で撃沈されていたことでしょう。身の程を知れ、という教訓だと受け止めたいと思います。前回応募した別のグラントも、提出直前に関連した論文を出されてしまい、大幅に変更しないといけないハメに陥りました。私のアイデアが凡庸なのが悪いのでしょうけど、私よりも先に同じようなアイデアを思いついてやっている方は、私がグラントを書く前に論文を発表して下さい。グラントの提出直前とかレビュー前とかは最悪ですからね。

このCell論文のガン研究者の人も辿っていけば、MITのWhiteheadに行き着きます。Whiteheadの研究者と言えば誰もが眩しすぎて直視すると目が潰れるほどですが、マウスのエピジェネティクス、ステムセルの研究分野ではFounding memberでもあるRudolf Jaenischが直接的、間接的にこの世界に与えた影響の大きさは驚くべきものがあります。数多くの彼の弟子がこの世界でトップクラスの研究を出し続けています。つい先日はそのJaenischをメインの一人に据えたステムセル関係のシンポジウムに行きました。トリはJaenischとiPSの山中先生でした。山中先生の話を直かに聞くのは実は私は初めてでした。公演中、うわさで聞いていた関西系のコテコテのギャグが炸裂しどうなることかと思っていたら、意外にも結構聴衆には受けていました。Jaenischの話は何度も聞いたことがありましたが、今回は久しぶりだったので流石に昔と同じ冗談はでませんでした。私はDoug Meltonの話にやはり感銘を受けました。特定の段階まで分化させたステムセルを如何にそれ以上分化させずに増殖させるかという問題について話しました。この人の話も何度か聞きましたが、聞く度に新たに感心する所があります。頭の良さを感じさせる人です。山中先生の話で感心した所は、iPSとESの違いについての話でした。これまでにiPSは元の組織の記憶を引きずっているとか、エピジェネティクな修飾が違うとか、少なからぬ数の論文が有名雑誌に出て、iPSとESとの違いが強調されてきたわけですが、その結論は尚早である、ということを50クローン以上のiPSをいろいろなアッセイで比較して示されました。おそらくESもそうでしょうが、iPSの質にはかなりのバラツキがあって、質の「悪い」ものは確かにESとは違うが、質の「良い」ものはESと見分けがつかないという話でした。こういう地道でかつ力のいる仕事をしっかりできるのが日本の研究の強みなのかな、と思ったりしたわけです。日本製の工業製品と同様、しっかりしたデータと基礎の上に積み重ねられる技術であるからこそ、信頼性も発展性もあるのでしょう。

ところで話変ってTPPですが、日本をTPPに引き込むアメリカのもう一つの目的を指摘してある記事を読んで、アメリカを利するTPPは経済協定であると同時に実は軍事戦略なのだということを納得させられました。ガダフィが殺された第一の理由はおそらくガダフィがアフリカを連合して欧米支配から独立するという構想を持っていたからだろうという意見があります。良く知りませんでしたが、産油国リビアの生活レベルは高く、一般国民が独裁に虐げられているという話はウソではないかという話もありました。事実エジプトやチュニジアでの市民デモはなかなかリビアには飛び火しませんでした。ヨーロッパがアフリカの植民地化にあたってしたことは分断でした。力の弱いものが強いものに対抗する唯一有効な手段は「連帯、団結」です。アフリカの連帯を望んだガダフィは故に欧米の脅威であったというわけです。同様に日本国民の側にたってアメリカが言うタテマエとは違う真の「民主主義社会」を望む小沢氏をアメリカの出先機関の日本の官僚国家権力が20年以上にわたってあの手、この手で潰そうとしてきています。日本人が連帯してアメリカの無理に「ノー」と言われたら困るからです。話をTPPに戻しますと、TPPの軍事的目的とは、即ち、日本をアジア圏から分断し、アジア諸国が連帯して欧米支配に抵抗しにくくするための手であるということです。下に、「何となく」クリスタルクリアな田中康夫氏の記事を引用したいと思います。(一部省略、強調)


“護送船団”記者クラブは、枯れ葉剤でヴェトナム戦争に“貢献”し、今や遺伝子組み換え作物開発でシェア9割を超える米国モンサント社と昨年、長期的協力関係を締結した住友化学の米倉弘昌会長率いる日本経団連を慮(おもんばか)ってか、TPPを農業問題へと意図的に矮小化しています。

宰相NÖDÁは17日、「日本は貿易立国だ。アジア太平洋地域は成長のエンジンになるので、高いレベルのTPP経済連携は日本にとってプラスだ」と内閣記者会インタヴューで高言しました。

呵々。日本の最大輸出先国は中国その中国のみならず韓国、台湾にも参加を求めぬアメリカ主導のTPPは、アジアに於ける日本の“孤立化”を画策する「環太平洋戦略的経済“分断”協定」に他なりません。
にも拘らず、外交に於いても性善説が通用すると信じて疑わぬのか、交渉の途中でも離脱は可能と自称“ドラえもん”官房長官も他称“口先番長”政調会長も明言する始末。それって、破談にするかも知れないけど取り敢えずは結納の打ち合わせをしませんか、と持ち掛けて許されると思い込んでるKYな男性と一緒じゃありませんか。
斯くも“お子ちゃま”な認識と覚悟だから、百戦錬磨の北朝鮮にも中国にもアメリカにも見くびられてしまうのです。与党統一会派「国民新党・新党日本」の諫言にも耳を貸さず、アメリカに阿諛追従(あゆついしょう)の日本経団連改め米倉経「米」連と一蓮托生の民主党政権の猪突猛進を阻止せねば、「にっぽん改国」ならぬ「壊国」へと奈落の底です。

お説の通りです。松下政経塾のドジョウや口先番長、私はこの連中は確信犯だと思っていましたが、ひょっとしたら大人になりそこなった(病識の無い)病人なのかもしれません。だとしたら始末が悪いです。

コメント
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