今年の研究費申請には、研究室存続がかかっております。締め切りまで約半年、それまでにあと二本は論文を出したいと頑張っております。論文のアクセプトまで一年以上かかることもしばしばですから、どうなるか分かりません。原稿を書きつつ、詰めの実験をしつつ、研究費申請を書きつつ、そのための実験をしつつ、日々の雑用をこなしつつ、という日々です。昔から綱渡り人生で、綱渡り経験はそれなりにあるはずですが、何度たっても慣れません。
〆切とか待ち合わせとかが昔から苦手で、遅れたらどうしようと心配して、早く始めすぎて、中だるみして〆切前にジタバタすることになったり、また時間にヘンに余裕があると一旦テンパイした手を崩して組み直そうとしたり、要らないことをしてしまってかえって悪くしたりします。どうも、いろいろ考え込んでしまう方で、それがストレスを増やしているようです。
心配することの8割以上は実際には起こらないという統計があるそうですし、心配も何もしなくても、良くないことは起こりますし、起こらないものは起こらないのですから、結果的には、殆どの心配はストレスを作り出すだけと言えないこともありません。しかし、心配することによって、色んな可能性を考えますから、心配が全く悪いわけではなく、すべき心配としなくてよい心配を見分けて、すべき心配をしたらあとは現在のことに集中するというのが理想なのだと思います。とはいっても、客観的に自分を見て、自分に適切なアドバイスするというのは難しいものです。すべき心配とすべきでない心配がリアルタイムでは簡単に判断がつきにくい場合も多々あります。研究でもそうですね。振り返って評価すれば、する意味のない実験というのは研究活動の8割以上を占めているように思います。しかし、その8割のムダがあったせいで2割の成果が出たという部分もあるのも事実かと思います。
今回、研究申請の一つのネタは、オーソドックスに行った場合にはちょっと微妙なプロジェクトなので、「流行りワザ」を取り入れて、見栄えを良くする戦略を考えています。流行りワザは、Crispr/Casがアピール感が強いかなと思って手を出してみようかと考えています。このシステムはかなり応用性の高い技術ですから、これからもいろんな利用法が出てくるだろうと思います。私の考えている利用法は、まだ報告はありませんけど、誰かやっているはずです。
関連技術の変遷をみるとやはり深い感慨を抱かずにはおれません。ZFNによる遺伝子改変の技術を使ってラットのノックアウトが作られたとニュースを聞いたのがつい最近のことのようです。ZFNはちょっと使いづらいと思っていたときにTALENが開発されて、当時は私はこの技術の発展形が遺伝子編集技術の最終形になるのではないかと思いました。しかし、その後、間もなく、ZFNやTALENと異なるメカニズムを使ったCrispr/Casが彗星のように登場し衝撃を受けました。TALENよりも遥かに簡便で、応用性が高く、スケールアップが容易なこのような技術が、これほど早くに開発されるとは思ってもみませんでした。これでおそらく、ZFNもTALENもメインストリームから消えて行ってしまうでしょう。
二週間前のNatureの記事では、プラスミド リポジトリサービスのAddgeneが、昨年、リクエストに応じて配布したCrispr/cas関連プラスミドは12,000以上との話ですから、世界中でおそらく一万人に近い研究者がCrispr/Casを使い始めているということではないでしょうか。そういえば、このシステムの応用でトップ集団を走るMITのZhangという若手研究者は昨年のNatureでもっともインパクトのある研究者10人の一人に選ばれていました。
思えば、こうした技術の進歩が過去のスタンダードな実験方法、場合によっては研究の目的にそのものにさえ変化をもたらしてきました。RNA発現解析法に喩えれば、これはReal-time PCRがノーザンブロットに置き換わり、次世代遺伝子シークエンサーが最終的にはマイクロアレイ技術に置き換わるようなものだと思います。テクノロジーの進歩にはいろいろ驚かされることが多いですが、バイオロジーは、なかなかそういうわけにはいきませんね。華々しいニュースを横目で見ながら、十年一日のごとくコツコツと毎日、勤める日々です。
〆切とか待ち合わせとかが昔から苦手で、遅れたらどうしようと心配して、早く始めすぎて、中だるみして〆切前にジタバタすることになったり、また時間にヘンに余裕があると一旦テンパイした手を崩して組み直そうとしたり、要らないことをしてしまってかえって悪くしたりします。どうも、いろいろ考え込んでしまう方で、それがストレスを増やしているようです。
心配することの8割以上は実際には起こらないという統計があるそうですし、心配も何もしなくても、良くないことは起こりますし、起こらないものは起こらないのですから、結果的には、殆どの心配はストレスを作り出すだけと言えないこともありません。しかし、心配することによって、色んな可能性を考えますから、心配が全く悪いわけではなく、すべき心配としなくてよい心配を見分けて、すべき心配をしたらあとは現在のことに集中するというのが理想なのだと思います。とはいっても、客観的に自分を見て、自分に適切なアドバイスするというのは難しいものです。すべき心配とすべきでない心配がリアルタイムでは簡単に判断がつきにくい場合も多々あります。研究でもそうですね。振り返って評価すれば、する意味のない実験というのは研究活動の8割以上を占めているように思います。しかし、その8割のムダがあったせいで2割の成果が出たという部分もあるのも事実かと思います。
今回、研究申請の一つのネタは、オーソドックスに行った場合にはちょっと微妙なプロジェクトなので、「流行りワザ」を取り入れて、見栄えを良くする戦略を考えています。流行りワザは、Crispr/Casがアピール感が強いかなと思って手を出してみようかと考えています。このシステムはかなり応用性の高い技術ですから、これからもいろんな利用法が出てくるだろうと思います。私の考えている利用法は、まだ報告はありませんけど、誰かやっているはずです。
関連技術の変遷をみるとやはり深い感慨を抱かずにはおれません。ZFNによる遺伝子改変の技術を使ってラットのノックアウトが作られたとニュースを聞いたのがつい最近のことのようです。ZFNはちょっと使いづらいと思っていたときにTALENが開発されて、当時は私はこの技術の発展形が遺伝子編集技術の最終形になるのではないかと思いました。しかし、その後、間もなく、ZFNやTALENと異なるメカニズムを使ったCrispr/Casが彗星のように登場し衝撃を受けました。TALENよりも遥かに簡便で、応用性が高く、スケールアップが容易なこのような技術が、これほど早くに開発されるとは思ってもみませんでした。これでおそらく、ZFNもTALENもメインストリームから消えて行ってしまうでしょう。
二週間前のNatureの記事では、プラスミド リポジトリサービスのAddgeneが、昨年、リクエストに応じて配布したCrispr/cas関連プラスミドは12,000以上との話ですから、世界中でおそらく一万人に近い研究者がCrispr/Casを使い始めているということではないでしょうか。そういえば、このシステムの応用でトップ集団を走るMITのZhangという若手研究者は昨年のNatureでもっともインパクトのある研究者10人の一人に選ばれていました。
思えば、こうした技術の進歩が過去のスタンダードな実験方法、場合によっては研究の目的にそのものにさえ変化をもたらしてきました。RNA発現解析法に喩えれば、これはReal-time PCRがノーザンブロットに置き換わり、次世代遺伝子シークエンサーが最終的にはマイクロアレイ技術に置き換わるようなものだと思います。テクノロジーの進歩にはいろいろ驚かされることが多いですが、バイオロジーは、なかなかそういうわけにはいきませんね。華々しいニュースを横目で見ながら、十年一日のごとくコツコツと毎日、勤める日々です。