tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

喫茶去 庵の平野重夫さん(by 西久保智美さんの「地域に生きる」第21回)

2014年12月21日 | 奈良にこだわる
奈良日日新聞に毎月連載されている「地域に生きる」に掲載された大浦悦子さんおよび林美佳さんを紹介してきて、大事な人を忘れていたことに気がついた。「喫茶去 庵(きっさこ あん)」の平野重夫さんである。平野さんは今年(2014年)の11月8日、「人生の楽園」(テレビ朝日系)に登場され、地元ではすっかり有名人になった。茶道を教えておられるが、お酒もめっぽう強い。西久保智美さんの「地域に生きる」には、昨年(2013年)3月に登場された。では、全文を紹介する。
※トップ写真は「旅の発見」のホームページから拝借


この写真は朝日新聞から拝借

奈良町で茶の湯体験
喫茶去 庵 平野 重夫さん


奈良町で、気軽に「茶の湯」体験ができると、外国人旅行者や観光客に人気の「喫茶去 庵(きっさこ・あん)」。庵主の平野重夫(茶名=宗重)さんが、立礼席でのお点前から和室での茶会体験など、作法のいろはを分かりやすく説明しながら、丁寧に指導する。

東京で会社員だった平野さんがお茶を始めたのは、今から30年ほど前。大阪への転勤を機に奈良へ引っ越し、休日は発掘ボランティアとして平城宮跡の現場に通っていた時のこと。出土した土師器や須恵器などの日本の焼き物に興味を持ったのがきっかけだった。「最初は考古学から興味を持ったのですが、いざお茶を学び始めると、作法や焼き物だけでなく、建築や書、花、漆など、日本文化の集大成ともいえるお茶の世界の奥深さにはまりました」と話す。



以下の写真と画像は、お店のホームページから拝借

もともとは1年の予定だった大阪勤務も、公私ともに充実した日々を過ごしていた平野さんは、東京への異動の内示を断った。「浅草出身の私は、昔ながらの下町の良さを感じる奈良に惹かれた」と終(つい)の住処(すみか)を奈良に決め、茶道以外にも華道や焼き物も始めた。「東京の下町がどんどん変わっていくなか、奈良は古い町並みも残り、近所がみんな親戚というような、あったかい空間が残っていた」



10年近く大阪で働いた後、再び東京勤務になっても週末は、お茶を教えるために奈良へ帰郷。そして退職を機に、平成22年7月に「喫茶去 庵」を開いた。茶会体験は価格も京都に比べると安めに設定されており、手軽に日本の文化を体験できると外国人の間で話題になっている。説明も通訳任せにせず、できる限り平野さんが挑戦。「外国の人たちにシンプルにお茶を説明することで、お茶になじみのない日本の人たちにも分かりやすく伝えられるようになった」そうだ。



お茶会では、「作法にとらわれることなく、心と心のふれあいとおもてなしを楽しんでほしい」と。体験をきっかけに、日常の中で抹茶を飲む機会が増えることを願っている平野さん。第二の故郷奈良で、茶の心をこれからも伝えていく。


以前「なら再発見」(産経新聞)に書いたことがあるが、大和とお茶の結びつきは古い。日本でのお茶は大同元(806)年、弘法大師・空海が唐から茶の種を持ち帰って室生にまき、製法を伝えたことに始まるといわれる。西大寺の叡尊(えいそん)は、弘安9(1286)年、「殺生禁断」を条件に宇治橋を改修するとともに、宇治川の漁師に茶の栽培を教えて生業とさせ、それが後の宇治茶盛業の起源になった。今も西大寺では叡尊をしのんで大茶盛(おおちゃもり)式が営まれる。

わび茶を完成したのは千利休だが、開祖は村田珠光(じゅこう)だ。珠光は室町時代中期、11歳で得度し、奈良市の称名寺(しょうみょうじ)に入った。吉野郡で生まれた武野紹鷗(じょうおう)は、珠光が基礎を築いたわび茶を洗練し、精神性を高めたとされる。紹鷗からわび茶の精神を受け継いだのが千利休、津田宗及(そうぎゅう)、今井宗久(そうきゅう)で「天下三宗匠」と並び称される。今井宗久は橿原市今井町の出身といわれる…。



閑話休題。浅草出身で東京で勤務されていた平野さんが奈良に魅せられ、定年後、本格的なお抹茶を楽しめ、茶の湯体験もできるお店を奈良町に開店された。奈良にとって、こんな嬉しいことはない。平野さんはいつお会いしても、溌剌としておられる。

テレビでは、奥さんの存在感が大きかった。ぜひこれからも、奥さんと二人三脚で「喫茶去 庵」を大いに盛り立てていただきたい。平野さん、期待していますよ! 西久保さん、素晴らしい記事を有難うございました!
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クイーンアリスと奈良迎賓館が閉店! 観光地奈良の勝ち残り戦略(83)

2014年12月20日 | 奈良にこだわる

昨日(12/19)県は、県営プール跡地に建設する国際級ホテルに関し、「森トラスト」のグループを「優先交渉権者」に選んだ、と発表した。これで当地への高級ホテル建設が、一歩前進したことになる(朝日新聞の記事は、こちら)。しかしそんな朗報の一方で、こんな残念なニュースが飛び込んできた。まだマスコミでは報じられていない。

奈良県新公会堂内のレストラン「奈良迎賓館」と、シルクロード交流館内のレストラン「クイーンアリス・シルクロード」が、本年(2014年)末をもって閉店するというのだ(公式HPは、こちら)。新公会堂のFacebookをチェックしていたYさんから、この情報をいただいた。これら2つのレストランは、初代料理の鉄人として知られる石鍋裕がプロデュースしていた。

以前から、これらレストランに関する芳しい評判はあまり聞かなかった。とりわけ「奈良迎賓館」は、「4,752円(通常平均)、8,000円(宴会平均)、3,888円(ランチ平均)」(ぐるなびの「平均予算」)と、手軽に食べられる値段ではなかった。顧客ニーズと価格設定にギャップがあったようだ。

業者側はよく「奈良で食べ物商売は難しい」と言う。お客側は「奈良では、なかなか思い通りの食事ができない」と言う。需要と供給がうまく一致しないのだ。だから奈良市で最も集客力のある東向商店街は、大規模外食チェーン店にどんどん浸蝕されている。「とんかつがんこ」や「天下一品」や「マクドナルド」なら、当たり外れがないからだ。

「小売りは立地」と言われるが、飲食店も立地に大きく左右される。奈良県新公会堂やシルクロード交流館は、商売をするには「微妙」な場所だ。ゴールデンウィークや正倉院展の時期ならいざ知らず、普段はわざわざ足を運んで食事をする場所ではない。「夢風ひろば」も、似たようなことが言えるかも知れない。奈良国立博物館の「葉風泰夢(ハーフタイム)」は、中国料理の桃谷楼が運営する美味しいカフェだが、正倉院展の時期以外は苦戦しているのではないだろうか。

もっとも、その一方で善戦しているお店もある。釜飯の「志津香(しづか)公園店」は、いつも行列が出来ているし、東向商店街の「おしゃべりな亀」や「チャイナダイニング 飛天」や「おかる」も、コンスタントに集客できている。一定の水準を突き抜けると、クチコミやSNSで評判がぱあっと広がり、多くの新規客やリピーターが訪れるのだろう。

いつまでも「奈良で商売は難しい」と歎いてばかりいるわけには行かない。最近は外国人観光客もたくさん訪れている。これら顧客のニーズをよく読み、メニューや価格設定や見せ方を十分工夫して、「奈良は社寺だけでなく、食事も美味しかった」と言っていただける観光地をめざしてほしいものだ。 
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静亭 女将 林美佳さん(by 西久保智美さんの「地域に生きる」第37回)

2014年12月19日 | 奈良にこだわる
一昨日(12/17)、奈良日日新聞に毎月連載されている「地域に生きる」の第41回(11/28付)に登場された大浦悦子さんを紹介させていただいた。紹介が遅れたが8月には、吉野山の季節料理「静亭(しずかてい)」の若女将・林美佳さんが登場されていた。林さんとは以前からFacebookの友達で、お店で美味しい柿の葉寿司をいただいたことや、吉野山の桜若葉の写真を送っていただいたこともある。遅ればせながら、以下に、林さんの回を紹介する。
※写真は若女将さんのブログと、お店のホームページから拝借

第二のふるさと目指し
季節料理 静亭 女将 林 美佳さん

「若女将(おかみ)」の愛称で親しまれている女性がいる。彼女は吉野山の勝手神社前で、季節料理や山菜料理を出す「静亭」の女将、林美佳さん(34)。「おかえりなさい」とお客さんを出迎え、「行ってらっしゃい」と見送る。その心は、母親で先代の女将から受け継いだ、静亭ならではの「おもてなし」。飾らない彼女の人柄にひかれ、地元はもとより各地からのリピーターが後を絶たない。



「20歳で母が亡くなって、心の準備もできないまま、お店に立ちましたが、女将というにも何の経験もありませんでした。あれから14年。ぼちぼち若女将は卒業なのかもしれませんが」と笑う。静亭は、戦後に祖母が始め、美佳さんの母親とともに切り盛りしてきた店。幼い頃から祖母や両親が働く姿を見て育ってきた。「一人っ子だったので、ことあるごとに跡を継ぐようには言われましが、一度ぐらいは外に出たいと社会福祉士を目指し、学校に通っていました」

束の間の夢を思い描いていたものの、突然の母親の死で、資格の取得をあきらめ、短大卒業後、店に入った美佳さん。季節は吉野山の観桜期。朝から閉店までひっきりなしにお客さんが訪れ、ひと息つく間もなく祖母や父親の指示のまま、店内をばたばたと走り回っていたという。「忙しかったおかげで母のことを思い出すこともなかったのですが、店が落ち着いたら、母のことばかり考えるようになって」。仕事も手につかなくなり、半年ぐらい休養をした。母親が生き生きと働いていた姿や、夕食時に楽しそうにお客さんの話をしていたことを思い出し、母親が大事にしてきた静亭で、自分は何ができるんだろうと考えてみたが、答えは見つからなかった。



しかし、母親が大切にしていたお客さんを出迎えるために、翌年には気持ちを奮い立たせ、店に復帰。「女将さんは」と尋ねられるたび、素直に母親のことを話したことで心の整理がつき、反対に勇気づけられたという。そしてそのうれしかった気持ちを手紙にしたため、お客さんに送るようになってから、静亭はお客さんにとって心がほっと落ち着く場所、第二のふるさとであってほしいと願っている自分の気持ちに気がついた。観光地の吉野とはいえ、来る人によって求めているものは違うという。「母が目指していたものは、その一人ひとりに合ったおもてなしだった。それは、私が目指したいことでもあったんです」と話す。

いまは夫と二人三脚で店を切り盛りする美佳さん。「祖母も父も亡くなりましたが、3人の子どもにも恵まれました。味だけでなく、想いも受け継ぎ、育てていきたい」。まだまだ女将奮闘中。でもいまは目指すべきところは、はっきりと見据えている。



「静亭」の店名は、お向かいの勝手神社で静御前が舞を舞ったことに由来するという。このお店は、NPO法人「奈良まほろばソムソリエの会」の加藤英之さんに教えていただいた。愛知県刈谷市にお住まいなのに、お嬢さんと一緒に何度もお店を訪問され「ここの柿の葉寿司は美味しいですよ」とお薦めいただいたのだ。加藤さんはその後、産経新聞の「なら再発見」に、柿の葉寿司の記事をお書きになった。

若女将さんはいつも明るくお元気なので、このようなご苦労があったことは、今回の「地域に生きる」で初めて知った。若女将さん、これからも素晴らしいおもてなしで、吉野へお客さまを引きつけてください! 西久保さん、素晴らしい記事を有難うございました!
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宇宙椅子文化祭、12月19日(金)~20日(土)に開催!(2014Topic)

2014年12月18日 | お知らせ
古墳型クッションが大人気の「宇宙椅子」(代表:フクトククニヲ)さんが、12月19日(金)と20日(土)の両日、それぞれ13:00~21:00、近鉄奈良駅から徒歩1分の「ホ・スセリ」(東向北の「さくらバーガー」2階)で、「宇宙椅子文化祭~アジアの縁日」という展示即売とカフェ&バールのイベントをされる。
宇宙椅子のHPによると、

近鉄奈良駅より徒歩1分のところにあります、奈良で大人気のお店、「さくらバーガー」さんのお2階イベントスペース「ホ・スセリ」さんで 2014年を締めくくる、宇宙椅子主催のイベントを開催します。地元の方も、観光の方も、どなたでも気軽に立ち寄れるようにとアジアのマーケットの片隅のような雰囲気をつくってお待ちしております。

スタンド形式になりますが屋台のようなカフェ&バールもご用意しています。ひとが出合うマーケット。地元のレアな情報などもゲットできるかもしれません。どうぞ、あたたかいお部屋で、ゆっくり遊んで行って、いただけたらと思います。

* 宇宙椅子文化祭~アジアの縁日 in ホ・スセリ *
古墳クッション販売
屋台カフェ&バール (スタンド形式になります)
旅人吊り市
日時 12月19日(金)20日(土)13:00~21:00
場所 ホ・スセリ(近鉄奈良駅徒歩1分)
奈良市東向北町6 さくらバーガー2階 TEL 0742-31-3813


フクトクさんの古墳クッション展は、以前、当ブログでも紹介したことがある。人気の古墳クッションは、あべのハルカスや東急ハンズで期間限定で店頭販売されるほか、ネットショップでも好評販売中だ。「宇宙椅子文化祭」では、近鉄奈良駅スグの場所で、その現物が展示即売されるのだ。この機会に、ぜひ足をお運びください!

京都府長岡京市の恵解山(いげのやま)古墳をかたどったクッション
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俚志 編集長の大浦悦子さん(by 西久保智美さんの「地域に生きる」第41回)

2014年12月17日 | 奈良にこだわる
奈良日日新聞に毎月1回掲載される「地域に生きる」は、いつも楽しみにしている。書き手は旧知の西久保智美さんだし、登場人物にも知人が多い。以前、尾上忠大さん(森と水の源流館)が登場され、当ブログで紹介させていただいた。先日(11/28付)登場した季刊誌『俚志(さとびごころ)』編集長の大浦悦子さんとは、11/14に開催された「大神神社酒祭り うま酒ツアー」でお会いしたばかりだ。

『俚志』最新号(秋号)の特集は「地域おこし協力隊」だった。《奈良県内で活躍中の協力隊員さんの中から川上村、吉野町、奈良市の3ヶ所を訪ね、取り組みやこれからのことなどをうかがってみました》というもので、これは貴重な情報だった。この特集は、こちら(PDF)で読むことができる。知人の吉村耕治さん、鳥居由佳さん、村山祐里さんなどが紹介されている。鳥居さんは最近、Yahoo!ニュースで「吉野杉の『おすぎ』を買った女」として話題になった。では以下に「地域に生きる 41」の全文を紹介するので、ぜひお読みいただきたい。

人をつなぐ季刊誌
『俚志』編集長 大浦 悦子さん

奈良の地域でいろいろな活動に取り組む人や、活動事例を紹介するマガジン『俚志(さとびごころ)』が、平成22年3月に第1号を発刊されてから、この冬号で第20号を迎える。発行人であり、編集長の大浦悦子さんは「地域の活性化には、異分野の情報や活動を、もっと知り合える機会が必要と思い、退職後、そのネットワークとして、季刊誌を発刊することに決めたのが始まりです」と話す。

地方自治研センターで3年間、季刊誌の発行に携わっていた大浦さんは、地域でいろんな活動をしている人たちと出会い、気づけば、その面白みにはまっていたという。「定年間際に地方自治研センターで編集のお手伝いをすることになったのですが、もともと理系で、文章を書くのは苦手。四苦八苦していました。ですが、いろいろな活動している人たちに出会うのが面白くなってきて、もうちょっと続けたいなと思ったんです」と、編集やデザインなどの協力者を探し、自己資金で『俚志』を立ち上げた。

当初は、ほぼ大浦さんが企画から取材などをこなし、編集のプロに校正をしてもらったり、それぞれの専門家から寄稿してもらったりしながら、手探りで制作を進めた。「今思えば、勢いだけで突っ走っていましたね。だんだん発行回数を重ねていくうちに、内容や知識的なことで壁にぶつかって、いろいろと悩んだり、迷ったりもしましたが、そんな時に限って、協力者が現れたりして、人との出会いに恵まれて、発行できていると実感しています」。


今では、編集者など、制作に関わる人も増え、編集会議を開くように。「関わってくださる人が増え、記事の内容も厚みが出てきたように思います」と大浦さん。わずか500部の発行ながらも、「地域の絆を支える祭」「薬草に見る大和の今昔」などのコアな特集や、地方自治、環境保全、福祉など、さまざまな分野を深く掘り下げた記事は、奈良で暮らす人たちにとって、奈良への新たな視点や再発見をもたらしてくれる季刊誌として、根強い人気を集めている。

編集体制が整った今、さらに多くの人とのつながりを求めて、ホームページとの連動企画や、読者から投稿できるような体制を考えているという。「でも一番大事なのは、Face to Face 。人のつながりを実感できる媒体でありたいと思っています。来年3月で創刊して丸5年を迎えますが、深く知れば知るほど奈良は面白い。それぞれに想いを持って、いろんな地域で活動している人やその取り組みを、これからもどんどん紹介し、私たちが暮らす奈良について考える機会を提供していけたら」と大浦さん。

1人の想いから始まった『俚志』は、共感する人たちを巻き込みながら、100年住み続けたい奈良のためのポジティブマイノリティー応援マガジンとして、今後も続く。


自己資金を投入して季刊誌を作られ、まもなく丸5年を迎えるのだ。大変なご苦労だったことと思うが、よく今まで続けてこられたものだ。「地域で活動している人やその取り組みを、これからもどんどん紹介し、私たちが暮らす奈良について考える機会を提供していけたら」という思いは、私も同じである。大浦さん、これからも地域の情報を発信し続けてください!
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