前に竜の尾のうろこ模様に見える群生のカワラタケを取り上げた。それを見つけた場所から10数mのところにあったのが、画像の赤いカワラタケ。赤いのは比較的陽の当たる場所の倒木に生えているようだ。
私の生家はむかし『コバ屋根』という杉の板で葺いた屋根だった。杉の板といっても、製材屋さんが帯ノコで引いた板ではなく、ナタで正目に剥いだ板。我が地方の言い方ではヘグと言い、屋根屋さんがやるその仕事を『コバヘギ』と言った。
豪雪地帯だから、どれ位持つものだったのか、定期的に葺き換えるわけで、コバヘギの仕事をする姿はよく見られたし、よく眺めたものだった。そのコバ屋根をトタン葺きに替える家が多い中、ウチは赤い瓦葺きにした。父がモダン指向だったのか、あまり他所では見られない赤いセメント瓦。わざわざ『赤い瓦茸』と漢字で書いたのは、これを想い出したから。
このカワラタケの赤は橙に近いけれど、ウチの瓦は真紅だった。その瓦も色あせて傷みもひどくなりトタン屋根に替えたのが父の後を継いだ兄。そのおかげで中越地震にも耐えたのだが、トタン屋根とて雨風に曝されて塗料が薄くなり、地肌が透けてきたので、亡くなった兄の後を引き受ける格好になった私がペンキ塗りをした。何色にしようかと多少は迷ったがチョコレート色にした。赤青黄色などの派手な原色を選ぶ勇気が私にはなかった。
次のペンキ塗りは10年くらい後。気持ちが弾けて、屋根を市松模様にしたり、とんでもないアートをやってしまうか・・私には後々の私の気持ちが予想できない。