■ このところ建築モードな毎日。でも今回は本モードで。
角田光代の短篇集『人生ベストテン』講談社文庫を読み終えた。
表題作の「人生ベストテン」、40歳直前の鳩子が中学の同窓会に行こうと思ったのは、数名の幹事の中に岸田有作の名前があったから。中学2年の夏休み、たった3週間だけだったけれどつきあったふたり。
同窓会当日の昼どき、会社の同僚と食事に出て寿司屋のテーブルに着くなりいつもと雰囲気が違うことを指摘されて、「同窓会なのでござる」と鳩子が告白すると、「ひょっとして同窓会に初恋の君がくるとか?」「ね、ね、不倫のさ、不倫のきっかけ第一位ってさ、同窓会なんだってよ!」などと冷やかされる。
会場は西麻布のイタリヤ料理屋「ラ・カンパーナ」、薄暗い店内で五、六十人くらいの参加者の中から鳩子が初恋の人を見つけたのは同窓会がお開きになる頃だった。
「じゃあさ、二人だけで飲みに行こうか」 おいおい、なんだか平凡なパターンじゃないかと思いつつ読み進む。「それじゃあどこかで休んで行こう。二人だけの同窓会をしよう」 角田さん、なにこの展開と思っていると・・・。
後日鳩子が岸田有作から受け取った名刺を手に電話をすると老人が出た。何度電話しても同じことだった・・・。友人に電話してみると「ひどいわよねー、幹事やるなんていって、ドタキャンするんだから(後略)」「岸田くんは本当にこなかったの?一度も?終わりがけになってもこなかった?」
ラブホテルに一緒に入った岸田くんは偽者だった・・・。会場で鳩子はずいぶん顔立ちが変わった気がすると思ったのだが、結局最後まで別人だとは気がつかなかった。
25年ぶりに会ったとはいえ、初恋の人を間違えるかな。40年ぶりだって間違えない自信があるけどな・・・。
■「シャッフル!日本建築」というトランプの建築作品や建築家を選んだのは五十嵐太郎さんです。今回は西沢立衛さんですが、この人については何も知りませんので妹島和世さんとペアにしました。選者がどういう基準で選んだのかもよく分かりません。
西沢さんが手にしているもの、頭に載せているもの、洋服の模様 これらは皆西沢さんの作品から採ったものでしょうがひとつも分かりません。先日取り上げた妹島さんの講演記録によると、95年に西沢さんは妹島さんと共同でSANAAを設立しています。同じ建物の中にふたりの事務所が別々にあって、ばらばらで仕事をしたり一緒にしたりという状況のようです。
「新建築」5月号に西沢さん設計の「十和田市現代美術館」が載っています。「金沢21世紀美術館」の場合大小大きさの異なる部屋を向きを揃えて配置し、直径が100mを越える真円でそれらを束ねていました。「十和田」の場合は部屋が離散的に配置されているだけです。「新建築」の写真を見て直感的にこう思ったのですが、掲載されている座談会(西沢立衛、小池一子、五十嵐太郎)の記録を読んで五十嵐さんが同様の印象を語っているのにちょっとびっくりしました。
美術館の写真はこちらで↓
http://www.tokyoartbeat.com/tablog/entries.ja/2008/04/towada.html
絵画の世界では作家が意図しない、偶然に描かれる図柄をそのまま作品にしたものもあります。まさか建築の場合にはそんなことは無いでしょうが、そのように思わせるプランを見かけるようになりました。
映画「最高の人生の見つけ方」では主人公のふたりが人生のラスト6ヶ月でやりたいことを紙に書き出して実現した項目を線で消していました。
それに倣って青森県立美術館、十和田市現代美術館はじめ見学したい作品をノートにでも書き出してみようかなと思います。そうして毎日見ていると見学が実現するかもしれません。