● PR誌「ちくま」などの連載に書き下ろしを加えたのが藤森照信さんの『建築史的モンダイ』。今日、車内で読み終えてしまった。
全28編のうち「建築史的タテヨコ問題」が一番面白かった。建物の縦長と横長について取り上げていて**世界の宗教建築はことごとく縦長もしくは正方形になっているのに、どうして日本の場合、寺も神社も横長なのか。**というモンダイを解き明かしている。
教会建築については知識がないが、確かにキリスト教会は縦長だ。**聖なるものが建物の奥深くましますというのは宗教空間の本質にかなっているのである。**と藤森さんは説明する。
藤森さんによると仏教建築が横長になったのは中国に入ってからだそうで、中国に仏教以前からあった宗教施設は祭られる対象が(藤森さんは祀られるではなく、祭られるとしている)実在の人物であって、キリストのような絶対的、超越的な存在ではないとし、自分達と同じ人間を祭るのだから建物の形式は住宅なのだと説明している。
中国の宗教建築は住宅を基本としているので横長になったのだという。住宅が横長というのはよくよく考えると?ではあるが、なんとなく納得してしまう。 ヨーロッパでも縦長は教会だけで、役所を含め、世俗建築は古来、横長が基本だという。
藤森さんは日本の神社や寺院の本殿や本堂は横長だが建築群は縦配置だと、ちゃんと「奥性」を指摘している。
いろいろな建築史的モンダイについて、曖昧な要素を排除して明快に解き明かし、簡潔に説明しているが故に、あれ?本当かな?と思うところもあった。が、藤森探偵の謎解きは今回もなかなか見事だった。