和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

挨拶として完璧である。

2017-03-14 | 詩歌
注文した古本が月曜日届く。

講談社学術文庫「英文収録おくのほそ道」
ドナルド・キーン訳。
この文庫にキーン氏の講演も掲載されていて、
そこから引用。


「『おくのほそ道』にも即興的にできた挨拶の句がかなりある。
例えば、尾花沢で清風(せいふう)という人を訪ね、
『かれは富めるものなれども志いやしからず。
都にも折々かよひて、さすがに旅の情けをも知りたれば、
日比(ひごろ)とどめて、長途(ちやうど)のいたはり、
さまざまにもてなし侍る』。
そして、一つの俳句を作った。
 
 涼しさを我が宿にしてねまる也

これは清風に対する挨拶であろう。
暑い夏の旅だが、あなたの家は涼しい。
我が家にいるような気楽さで、くつろぎ座っている。
内容はあまり深くないが、挨拶として完璧である。
また、俳句の中にある『ねまる』は、
この地方の方言で膝をくずして楽に座ることである。
土地の人は関西の人であった芭蕉が自分たちの
方言を使うことを喜んだだろう。
軽くて爽やかな調子のこの句の特徴を挙げうると、
改作(つまり、芭蕉がなにかの理由で俳句を変えた)
の跡が見られないことである。
挨拶という目的で作った俳句だったので、
一旦完成すれば、それ以上表現を磨いたり、
またはより簡潔にする必要を感じなかったのであろう。
・・・・・」

うん。印象に残る。
芭蕉も、旅の苦労を癒されて
うれしかったのでしょうね。
そんな気分がそのままにすくいとられている感じがします。
コメント
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