「司馬遼太郎が考えたこと 13」(新潮文庫)に
司馬さんが須田剋太を紹介した2頁の文がありました。
うん。私に印象深いので引用します。
「 人間には、精神の喝(かつ)えがある。
それがために、もう一つの地球
―― 芸術のことだが ―― をほしがる。
私にとってのもう一つの地球として、須田芸術がある。
これは、至福なことだと思っている。
一緒に旅をし、砂漠を横切り、また湖水のほとりを歩き、
さらには村々を経めぐって帰宅したあと、
こんどは須田芸術という、もう一つの地球に入ることができるのである。
その地球は、私が自分の肉眼で見、手足でさわったはずの
この地球よりもいっそう鋭く、たくましく、ときに弾けるような
美しさが噴きこぼれつづけていて、私の日常を鼓舞してくれる。
『 須田先生の絵を眺めていると、生きる元気がわいてくるのです 』
といったのは、松山善三氏だった。
いわれたとき、目の前に、光が満ちてくる思いがした。
中国の長江を、朝の陽を浴びながら、
ジャンクが躍るようにすすんでいる。
画伯のそういう絵が、松山氏と私の前に展示されていたのである。
・・・・・・・
この私(ひそ)かなる体験は、画伯が、
もう一つの地球を、生物ぐるみ、創(つく)りつづけていることの、
たしかなあかしだと思っている。
それを感じるだけの力を、平素養いつづけねば
ならないことは、いうまでもない。 」(p232~233・文庫)
うん。3行ほどカットして、残り全文を引用しちゃいました。
古本で値が張るのを覚悟して須田剋太の装画全『街道をゆく』
を手元に置いて見ていたくなってくるのでした。
まあ『 それを感じるだけの力 』があればなのでしょうが・・・。