和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

山本書店

2025-02-10 | 本棚並べ
山本七平編「内村鑑三文明評論集」全4巻(講談社学術文庫)
というのが昭和52~53年に出ておりました。
山本七平氏は、1921(大正10)年生まれ、1991(平成3)年永眠。
そして、1994年に山本書店から、この内村鑑三評論集が上下巻で
出版されております。最初に山本書店店主 山本れい子の短文があります。

「 このたび、講談社のご厚意により『内村鑑三文明評論集』1~4巻を
  上下2巻にまとめて『勝利の生涯』として発行させていただくことに
  なりました。亡夫七平が内村先生の言葉を通して訴えたものは、
  先生の生きざまであり、それが七平の生涯でもあったように
  思えてなりません。皆様も勝利の生涯を送られますように
  お祈り申し上げます。・・・・    」

この上下巻の帯の背には、「 山本書店『復活』の新刊! 」とありました。
むろん、私のことですから、本文を読んではおりませんが、
この本のはじまりに山本七平氏の「内村鑑三と『聖書之研究』」が載っており
こちらは、読ませていただきました。
8ページほどの全文を味わって読みました。ここでは
そのはじまりの箇所だけを引用しておきます。

「 内村鑑三は、おそらく、あらゆる人が
  自分の位置で相対してよい人物であろう。

  そして私(七平)が、一出版者として彼と相対した場合、
  そこに見えるのはまず『 聖書之研究社 』という
  月刊雑誌の出版者であり、その成功せる経営者であり
  かつ名編集者兼主筆としての彼である。

  ということは、学者・評論家・歴史家・宗教家等が見る姿と
  別の姿が、否応なく私の目に入って来て、
  それ以外の視点で彼を見ることができない、ということである。
  生きている人間が、自分の言葉を本当に生きた一人間に対するとき、
  こうなるのが当然であろう。

  そして、そう見えた内村は、私にとっては、
  宗教家・思想家・学者・著作家として何らかの特別な世界、
  いわばさまざまな意味の≪象牙の塔≫の中で生きた人間でなく、
  むしろ世俗に生きた人、そして世俗社会を立派に生き抜き、
  決して破綻せず、生涯を通観すれば
  その社会でも成功者とさえ言える人であった。・・・     」 


はい。ここで、出版者の視点から内村鑑三を語りはじめられております。
こうもあります。

「・・内村が『聖書之研究』を創刊したのは明治32年、40歳のとき、
 西暦でいえば1900年であった。そして昭和5年(1930年)70歳で
 この世を去るまで、この雑誌の発行が彼の事業の中心であった。
 生涯のうち30年を投じた事業は、文字通りに
 ≪ その人の生涯 ≫であったといえる。
 そしてこの30年の開始、すなわち40歳に至るまでに、
 内村には実に長くて苦しい試行錯誤の時代があった。・・・・  」


はい。雑誌「諸君!」の廃刊では、山本七平はもう亡くなっておりました。
今年は、内村鑑三と山本七平と、関連してあちこち齧り読みできますように。
そんなことを思う2月なのでした。

コメント
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