和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

『本の世界』を面白がる夢。

2025-01-25 | 前書・後書。
本を読まない癖して、古本は買います。
そうすると、『 まえがき 』だけですます本もある。
上手な文は、『 まえがき 』だけで十分魅了される。

朝日選書683・酒井紀美著「夢語り・夢解きの中世」(2001年)が
古本で、本文が新品同様で200円。題名に惹かれて買いました。

この本の『 はじめに――夢と未来と 』から引用。

「 ・・中世の史料を見ていて、まず驚いたのが、夢の記事の多さである。
  夢の出てこない中世の物語をあげる方がむずかしい。また、
  いろいろな人が書き残した日記にも、夢に関する記述が数多く見られる。
  それも、自分が見た夢だけでなく、他の人が見た夢についても、
  じつにくわしくその内容が書かれている。・・・

  ・・・そこで・・・歩きはじめることにした。・・・   」(p3)

ちなみに、この文の、はじまりは、
「もう、ずいぶん前のことだが、西郷信綱氏の著された
 『 古代人の夢 』を手にして、引きこまれるように読んだ。」
とあります。
いけません。読む前に気になって古本を注文してしまいました。
『 古代人の夢 』には、「はじめに」がありませんでしたので、
第一章のはじまりのページから引用。

「・・古事記から今昔物語まで、あるいはもっと降って
 中世の諸作品に至るまで、夢の記事は、それをふくまないのが
 むしろ例外と思えるくらい豊富である。それもたんに
 数が多いだけでなしに、夢を見たということが
 話全体の動機づけを決定している場合さえ少なしとしない。
 夢は、昔の文学にはなくてかなわぬ
 大事な構成要素の一つであったらしいのである。・・   」(p9)


ところで、酒井紀美さんとはどのような本を出されているのだろう、
と次に思ったので、検索すると、
『 中世のうわさ 情報伝達のしくみ 』(吉川弘文館・新装版2020年)
というのがある。この題名も興味を惹くので古本で注文しました。

かくして、肝心の本を読みはじめる前に、
噂がひろまるように、本が本を呼びます。

これだけじゃ、夢のようで、締まりがないでしょうか。
もう一冊引用。丸谷才一著「思考のレッスン」(文藝春秋・1999年)に

「 石川淳さんが・・『一冊の本』という題のコラムに
  原稿を依頼されたことがある。その書き出しがたしか、

  『 本来なら一冊の本といふことはあり得ない 』
  という文章でした。たくさんの本の中にあって初めて、
  一冊の本は意味があるのだ、というようなことを書いていらした。

  僕は、その通りだと思うんですね。
  孤立した一冊の本ではなく、 『 本の世界 』というものと向い合う、
  その中に入る。本との付き合いは、これが大切なんです。   」
                ( p115~116・単行本・レッスン3 )

せっかく、『思考のレッスン』をひらいたので、最後にこちらも引用。

「 僕は、おもしろがって読むことだと思うんですね。
  おもしろがるというエネルギーがなければ、本は読めないし、
  読んでも身につかない。無理やり読んだって何の益にもならない。 」
           ( p103 単行本・レッスン3の最初のページ )


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2 コメント

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 (きさら)
2025-01-26 10:29:57
夢は覚えていることが多いので
記録していますが(何の役にも立たないけれど・笑)
恐竜が出てくるような 設定の夢は見たことがあるのだけれど 時代物は全くないのが不思議です。
夢は 記憶の整理のように言われているけれど
たまに見知らぬ人も登場します。
有名人や お会いしたこともない ブロガーの方もなぜか登場しています。
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こんにちは。 (和田浦海岸)
2025-01-26 10:49:19
こんにちは。きさらさん。

この頃、寒いせいもあってか、
すぐに、寝ます。そのせいか、
夢を見ます。起きると忘れて、
トイレに行っているあいだに、
すっかり、夢のカケラもない。

寝て開く本の断片が、起きると何かと
結びついていることがおおいのでした。
その結び目を、ブログにあげることが、
私には、わりかし多いかもしれません。

そんなことが頭にあったせいで、
今回夢をテーマにしてみました。
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