和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

おまえさん おまえさん

2022-08-29 | 詩歌
田村隆一の短い追悼詩があって、引用することに。

      桜島   黒田三郎の霊に

    きみは
    たしか鹿児島の造士館の出身で
    城山にすまいがあった
    ぼくが
    山を見ればその山は桜島であって
    はじめてみた桜島は雪がつもっていた

    おまえさん
    おまえさん また逢おう


東京の下町生れの田村隆一さんが、鹿児島生れの黒田三郎と出会って、
どのような影響があったのか? どうだったのか?
なんて、わかりようがないのですが、
まるで履歴書のように、『きみ』『ぼく』とはじめた詩が
一行空白後『おまえさん おまえさん』と呼びかけてます。

交際の履歴書ならば、空白の間にはさまざま詰め込まれて
しかるべきなのでしょうが、出身から桜島とはじめだけを
とりあげたあとは、一行の空白の空間に押しこめたままに、
次にくるのは、最後の二行の呼びかけとなっておりました。

おいおい。それはないだろう。と思う反面。
語られない、空白空間のブラックボックス。
そこに、反古の詩篇は詰めこまれてるようで、
『言葉なんか覚えるんじゃなかった』と書く
田村隆一の息を吞むような一回きりの気合芸。

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4 コメント

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「一行の空白の空間」 (kei)
2022-09-01 11:48:58
こんにちは。

「田村隆一の息を吞むような一回きりの気合芸。」

「語られない、空白空間のブラックボックス。
そこに、反古の詩篇は詰めこまれてるようで、」

はい。このご指摘、考えさせられています。

出身地、桜島だけを取り上げて追悼する。
「一行の空白の空間」をとることで削いだ言葉、書かれなかった黒田への思い。
読めば読むほどに、何かしんみりしてきます。
これで充分な追悼の心を感じるからでしょうか…。

文章を書くうえでもいろいろ学ばされます。
返信する
飛び方。泳ぎ方。 (和田浦海岸)
2022-09-01 22:23:29
こんばんは。keiさん。
コメントありがとうございますその
ここ数日、ブログ更新を怠っていて、
なんだか、ブログの空白を指摘されてるようで、
申し訳ないような気になります。

鶴見俊輔さんの『文間の問題』というのを
あらためてとりだしたくなります。

「 これは文間文法の問題です。
  一つの文と文との間を
  どういうふうにして飛ぶか・・ 」

はい。私の場合は、飛び越えられずに、
文と文の間に、落っこちるタイプです。

落ちるともう、文をあきらめて、
ついつい、そのまま放置します。

夏は泳ぎ方。文は飛び方。
苦手なままに、夏は過ぎ。
切り替えてこれからは秋。
誰もが飛び方にコツなし。
そうですよね、keiさん。
返信する
コツ (kei)
2022-09-01 22:48:37
お返事、ありがとうございます。

はい、「コツ」などないように思いますね。
ましてやこの凡人は書いて書いて…。

「息を吞むような一回きりの気合芸」
返信する
こんにちは。 (和田浦海岸)
2022-09-02 13:18:19
こんにちは。keiさん。
二度目のコメントありがとうございます。

うん。芭蕉俳句でなら、
言いおおせて何かある。
ということになるのでしょうか。

keiさんや 俳句紐解く 秋まぢか
返信する

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