和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

広い範囲の中の百人。

2023-04-11 | 本棚並べ
アンソロジーを選ぶ人って、いったいどんな選択基準なのか?

そんな思いで丸谷才一著「文章読本」(中央公論社・昭和52年)をひらく。

その第二章は、「名文を読め」でした。ここから引用。

「 有名なのが名文か。そうではない。
  君が読んで感心すればそれが名文である。

  たとへどのやうに世評が高く、
  文学史で褒められてゐようと、
  教科書に載つてゐようと、
  君が詰まらぬと思つたものは駄文にすぎない。

  逆に、誰ひとり褒めない文章、
  世間から忘れられてひつそり埋れてゐる文章でも、
  さらにまた、いま配達されたばかりの新聞の論説でも、
  君が敬服し陶酔すれば、それはたちまち名文となる。
  君自身の名文となる。・・・   」( p26 )


このあと、丸谷氏は『ただし』とつなげてゆくのでした。

「 ただしここで大切なのは、広い範囲にわたつて多読し、
  多様な名文を発見してそれに親しむことである。

  これは、わたしのすすめた、君自身の名文との・・・
  独断的な関係がともすればもたらしがちな幣を補ふのに、
  ずいぶん役立つだらう。

  それが文章の初心者の幼い趣味を陶治し、
  洗練してくれることは言ふまでもない。

  第一、われわれの文章のあつかはねばならぬ主題はおびただしく、
  われわれの文章の伝へねばならぬ気分は数多い。
  それゆゑ必然的に文章の手本は多種多様でなければならない。」(p27)


それでは、アンソロジストの丸谷才一氏は、それからどうしたのか?

はい。『 ただしここで大切なのは、広い範囲にわたつて多読し、
     多様な名文を発見してそれに親しむことである。   』とある。

『文章読本』を発表した、33年後の1999年に
 丸谷才一著『新々百人一首』を出します。
 丸谷さんが『大切にした』広範囲にわたって多読し、
 多様な名文を発見し、それに親しんだ成果を
 百人一首と限定して、提示してくれています。

 はい。わたしは、まだ読んでおりません(笑)。





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2 コメント

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Unknown (1948219suisen)
2023-04-11 14:17:40
>君が読んで感心すればそれが名文である。

短歌も同じですね。

短歌は、たった一人の心を打ったら十分だとよく言われます。
返信する
こんにちは。 (和田浦海岸)
2023-04-11 14:44:37
こんにちは。水仙さん。
コメントありがとうござます。

わたしが今回読みかえして、
気になったのは『ただし』
からの言葉でした。
再読楽しめました。
返信する

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