金田一春彦著「童謡・唱歌の世界」(主婦の友社・TOMO選書・昭和53年)。
この本の中の「 わらべうたの言葉 」(p114~138)が印象に残ります。
私が特に印象に残ったのは、ここでした。
「子どもは簡明・直截(ちょくせつ)な表現を喜ぶ。
それがわらべうたにまず反映する。
おとなの場合には、
『 恐れ入りますが、おいでいただけませんでしょうか 』とか
『 おいでくださいましたら、ありがたいのですが・・ 』とか言うのが、
子どもの場合は、簡単に『 来い! 』と言う。
ほたる来い! 行灯の光をちょっと見て来い!
と言うのも、夕焼け空を見ては、
あした天気になァれ
と叫ぶのも、その例である。
意気地のない子どもにたいしては、
弱虫毛虫、挟んで捨てろ
とはやす。
学校文法で言う、≪命令形≫がふんだんに出てくる・・・・ 」(p116)
そういえば、田村隆一に『命令形』と題する詩がありました。
うん。全文引用したくなります。
命令形 田村隆一
ゆき
ゆき
もっと ふりなさい
狐のような女の詩人が歌いながら
ぼくの夜の森から出て行ったが
この歌の命令形が好きだ
追ってゆきなさい、詩人よ、まっすぐ追って
夜の奥底までもゆきなさい、
束縛をとき放つあなたの声で
喜び祝えと、われわれにすすめてください。
ライオンのような詩人が
心の病いをいやす泉をもとめて
死せるアイルランドの詩人に祈った命令形が好きだ
人は人に命令できない
命令形が生きるのは
雪
そして詩の構造の光と闇の
谷間にひびく
人間の言葉