映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

上意討ち 三船敏郎

2009-07-05 20:06:24 | 映画(日本 昭和35年~49年)
昭和42年の時代劇作品。三船敏郎、仲代達矢の黒澤映画コンビが、「切腹」の小林正樹を監督に迎えてオーソドックスな時代劇をつくる。全体に重厚感があり、安心してみていられる。脇役を含め演技のレベルはきわめて高い。武満徹の音楽にも注目だ。

時は1700年代前半享保の時代、会津松平藩の3百石藩士三船敏郎のところに、息子加藤剛の嫁に殿の側室司葉子を引き受けてくれとの話が藩の重臣たちより来る。司は子を産んだが、大奥内での殿の別の妾とのいざこざで、殿とトラブルを起こしていた。養子だった三船は自分の息子だけは気に入った結婚をと断るが、加藤は家のことを思い引き受ける。司は美しく、性格もよく三船の一家になじんでいた。そして娘が生まれた。
ところが殿のお世継ぎが亡くなり、司の子供がお世継ぎになることとなった。そのためお世継ぎの母である司は大奥へ戻るようにご家老たちは画策し、三船と加藤親子を説得した。二人は拒絶したが。。。。

会津というと藤沢周平の一連の作品を思い出す。山田洋次の「たそがれ清兵衛」などと同じで開始してしばらくは殺剣の動きはない。むしろホームドラマのように動いていく。そして藩幹部の策略で動きがでるのは「たそがれ清兵衛」と同じ。役割は逆転してちがうけれど。。。。
こういう時代劇のストーリーが似てくるのは致し方ないと思う。演歌の歌がどれもこれも似ていて盗作騒ぎがたまに起こるのと同じである。基本的パターンは有限かもしれない。

三船は「赤ひげ」を撮り終わっていちばん円熟していた時期なのであろう。初期の黒沢映画のような荒々しさはないが、初老の役がいちばんうまい時期だ。
仲代達矢の映画をいる機会がここのところ多い。昭和30年代前半の作品と比べると、格段にこの作品での演技のレベルは高い。顔つきも引き締まってちがう。転換期なのであろう。
司葉子も現代劇だとわざとらしい演技でうまいと思わないが、ここではよい。
三船の妻役の鬼のような表情をした姑さんや神山繁、山形勲、三島雅夫の藩の悪い幹部たちの演技は実にうまい。見ていて憎たらしくなる。ものすごくレベルが高い。

そういった意味で小林正樹の演技指導はすばらしいといえる。
コメント
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