映画とライフデザイン

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映画「アイアムまきもと」 阿部サダヲ

2022-10-02 18:24:09 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「アイアムまきもと」を映画館で観てきました。


映画「アイアムまきもと」孤独死した人の後始末をする市役所の「おみおくり係」の話を阿部サダヲ主演で描く。『舞妓Haaaan!!!』、『謝罪の王様等に続き水田伸生監督とタッグを組む。

予告編で観ているときに、これって英国映画おみおくりの作法と似ているなと気づく。原作者ウベルト・パゾリーニ監督を製作者に入れて公認でリメイクしたもののようだ。この映画はジーンと心に響くすばらしい映画だった。映画スタート前に大きく「SONY 」の文字が出ている。日本映画にしては珍しいSONY配給だ。日本だけでなく諸外国にも売り込むつもりか?韓国に比べて、外国でのセールスには弱い日本映画だけに良いことだと感じる。

市役所の「おみおくり係」の牧本(阿部サダヲ)は孤独死した人の後始末をする仕事をしている。遺留品から遺族や友人だった人を探し、遺族から拒否されても葬儀を行なうことをモットーにしている。ところが、新任の局長から本来市役所が遺体や葬儀まで関わるべきでないと、今携わっている仕事を最後に「おみおくり係」の廃止を伝えられる。

警察の担当者(松下洸平)から連絡があった最後の仕事は、牧本が住むアパートの別棟に住む蕪木(宇崎竜童)という男の孤独死の処理だった。遺留品から蕪木のこれまでの人生をたどり、元いた会社の人(松尾スズキ)、同棲していた女性(宮沢りえ)、一緒に仕事をしていた仲間(國村隼)、そして娘(満島ひかり)にたどり着くが、誰も葬儀には出席しないという。それでも牧本はあきらめない。


やっぱり泣けた。
おみおくりの作法は好きだった映画だけに、数多く観た映画でも基本的なストーリーは鮮明に覚えている。今回日本が舞台になるので日本固有の事情でアレンジしている。それがいい。うまく脚本ができている。登場人物も宮沢りえをはじめ主演級を脇役につける。


融通のきかない主人公のキャラクターは原作と一緒で、まさに堅物の公務員という感じだ。ストーリーもここは違うのかと思っても最後に合わせてくる。牧本の情熱が実ってくる中でラストを迎える。こうなるとわかっているのに、激しく涙腺が刺激されてしまった。

⒈阿部サダヲとおみおくり係
おみおくり係の部屋には引き取り手のない遺骨が部屋中に置かれている。先日観た川っペリムコリッタでも主人公松山ケンイチの父親が孤独死する設定で、市役所に遺骨が数多く保管されている部屋があった。「川っペリ」では主人公が柄本佑演じる市役所職員のところに取りにいくだけマシである。葬儀に顔を出しても遺骨は引き取らない人も多い。


阿部サダヲのおみおくり係が一人で葬儀に出ているシーンを見ながら、費用はどうするんだろうと思っていた。縁の薄い遺族に請求しても拒否される。おみおくり係が自費で葬儀をあげているセリフを聞き驚く。映画のおみおくり係はやりすぎだなと感じる。さすがにここまでやる人はいないでしょう。

オリジナルのおみおくりの作法の主演エディマーサンは地味な脇役が多い。いろんな映画で脇役ででるので、コイツ見たことあるという人も多いだろう。おそらく主演で演じることはもうないんじゃないかな。


逆に阿部サダヲは、死刑囚を演じたと思ったら、今度は律儀な公務員と本当に器用でこれからも主演作は続くだろう。その意味では対照的だが、両方とも適役だ。

⒉のどかな日本海沿岸エリア
庄内市役所という架空の市役所だけど、酒田駅が映像に映るし、山形の酒田市周辺でロケしているのはわかる。ドローンを使って、俯瞰した空からの映像を何度も見せる。のどかないい街に見える。羽越本線を上空から映し出す映像を観て萩原健一、岸惠子共演約束に出てくる日本海沿いを走る列車を連想する。

以前、部下の父親が亡くなって酒田市の葬儀に参列しようとしたら、簡単にはいけないからやめたほうがいいと言われた。確かに、東京から行くと交通の便が極めて悪く次の仕事ができないのがわかって断念した。そういう場所だ。


以前孤独死した男が同棲していた女(宮沢りえ)のところに行き、海辺で女が漁師相手に営む食堂を映すシーンがある。そこで見える岩が美しい。鉾立岩と言って新潟の村上にある。ここで岩を見ながら食べる磯料理はきっとうまいだろうなあ。


⒊公務員の最後の仕事(軽いネタバレあり)
公務員の最後の仕事といえば、黒澤明の不朽の名作「生きる」志村喬が演じた老公務員を連想する。ストーリーはまったく違うが、原作者は「生きる」を意識していたであろう。がんとわかった典型的なお役所仕事しかしない主人公が、残り少ない人生で公園をつくろうと懸命に奮闘する姿を描く。


牧本はおみおくり係最後の仕事として葬儀をあげようと懸命にがんばる。「生きる」では、志村喬演じる亡くなった公務員の通夜の席で役所の同僚が故人をしのんで回想するシーンが中心だ。牧本は重篤な病気にかかっていたわけでない。ただ、悲劇が起きる。その直後に牧本を思う周囲の気持ちの描き方がむずかしい。「ラストのラスト」原作と同じ設定でいいのであるが、いくらなんでも普通は同僚がこう処遇しないだろう。ひと工夫あってもいい気がした。

それはわかっていながらも泣けるのは、やはりこの主人公に自分が感情移入できるものがあるからであろう。
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