映画とライフデザイン

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映画「首」 北野武&加瀬亮&西島秀俊

2023-11-27 17:41:25 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「首」を映画館で観てきました。


映画「首」は北野武監督の新作。戦国時代の織田信長明智光秀に本能寺の変で殺害される以前の武将同士の駆け引きの物語である。織田信長を加瀬亮,羽柴秀吉をビートたけし,明智光秀を西島秀俊が演じている。出演者は北野武監督「アウトレイジ」とかなり共通している。

映画評を見るとかなり割れている。高評価もあれば,北野武監督にしてはイマイチの評価もある。経験的に評価の分かれる映画は自分にとっては面白い場合が多い。そういう経験則に則り早速映画館に向かう。

織田信長(加瀬亮)は自分勝手でかなり強引に重臣たちを扱っていた。織田信長の重臣の1人荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こし、1年かかってようやく鎮圧するとともに村重は姿を消した。

信長は明智光秀(西島秀俊)や羽柴秀吉(ビートたけし)ら家臣たちを集め、自身の跡目相続を任せると村重の捜索命令を下す。秀吉は弟・秀長(大森南朋)や軍師・黒田官兵衛(浅野忠信)らとともに策を練り、元甲賀忍者の芸人・曽呂利新左衛門(木村祐一)に村重を探すよう指示する。

おもしろかった。
3作続いた「アウトレイジ」ムードが映画全般に漂う。時代をかえて、同じような手法でつくった感じだ。ビートたけしが原案を提供した「アナログ」はありふれていたけど、本人監督の作品は違う。映像の質、編集いずれも北野武監督の腕がさえる。悪いけど、評価低くした人たちの映画観る目??

日本史の中で戦国時代については妙に詳しい日本人が多い。別にインテリでなくても、信長、秀吉、家康と続く基本的な歴史の流れは日本人としての常識になっている。そういう前提でいくと、この映画は普通の日本人にとっては観やすい北野武監督がうまく自分なりの解釈をつくって面白おかしく映画を作ったと感じる。親分の織田信長が亡くなったと聞き、これまでは泣き悲しんで復讐に燃える秀吉を映し出すことが多かった。ここでは、裏で秀吉が高笑いだ。

逆にいうと、日本の戦国時代史に関する常識のない外国人には理解しづらい点が多いのではなかろうか?北野武流に茶化した部分が不自然に見えるような気がする。他国の映画祭ではウケないのではないか。


解像度の高い映像になっている。首切りを露骨に見せたり、血が吹き出すような場面も多く、普通だと映像の質を鮮明にしなかったりモノクロにしたりすることも考えられる。でもしない。通常よりも大画面の劇場で前の方で観たが、リアル感があり迫力を感じる。カメラワークもいい。接近戦の時にオッと唸る映像がいくつもあった。

⒈現代サラリーマン社会の縮図
横暴な経営者って最近減ったかもしれない。でもたまにニュース記事になっている。この映画は現代サラリーマン社会と通じるものがある。まさに怪演加瀬亮の織田信長は横暴なワンマン経営者に通じる。加瀬演じる「アウトレイジ」初期の暴れまわるヤクザは突っ張っているだけの弱々しいものを感じたが,ここでの名古屋弁交えた暴君パフォーマンスはすごい。蹴られたり暴力を振るわれた西島秀俊や遠藤憲一はたまったもんじゃないだろう。

ビートたけしのような上司もずいぶん出会った。「うまくやれよ。」と具体的な指示と言うよりも大雑把に結果を求める上司タイプだ。そういう自分もそんな指示した覚えがある。人のことはいえない。いずれも現代サラリーマン社会の縮図のようで何度も笑える。「翔んで埼玉」の10倍笑えた。


2.荒木村重
繰り返し放映される信長、秀吉、家康もので遠藤憲一演じる荒木村重話の肝になっているのはこれまでのドラマと異なる。信長に逆らって謀反を起こし、1年以上踏ん張ったという事実も知らなかった。それにしても、残された女子どもも含めた一族が皆殺しで首斬りされるシーンは残酷だ。

荒木村重千利休に近く、明智光秀に預けられるというのは北野武監督の創作だろう。でも、明智光秀と親しき仲で謀反に協力したなんて解釈はおもしろい。調べると、荒木村重は信長死後も生き延びたようだ。今回、斬られる訳でなく籠の中で山から放り出されるとしたのは、折衷案で余韻を残していいかも。


3.男色系の匂いと女性の扱い
「おんな太閤記」なんてTV番組もあったし、正妻、側室なんでもありとばかりに大勢女が登場することが多い。ここでは、メジャー女優の影がない。あくまで男性中心の映画だ。しかも、男色系の匂いをぷんぷんさせる。織田信長に対する森蘭丸の話はあまりにも有名だが、その信長が武将たちとの男色の関係を匂わせる。付き合わないなら干す。部下たちも色仕掛けで近づいていく。

本来、織田信長が行方不明になった荒木村重を何が何でも探せと言うのがこの映画の主題である。しかし千利休の斡旋で荒木村重が明智光秀のところに預けられる。しかも明智光秀とは男色の仲である。そこからこの映画が動くのだ。


今日のフェミニストからするとこの映画はあまりお好きでないかもしれない。女性の存在感が弱い。武士たちについている遊女たちが,毛利の水攻めから羽柴秀吉が撤退しようとしているときに,「メシの種逃げるぞ」という遊女のセリフがある。思わず笑える。まさに従軍慰安婦である。わけもわからない訴訟を出している連中を皮肉っている。

4.忍びの者とお笑い
忍者映画って、今の60代以上であれば子どもの頃からの記憶で何かときめく部分がある。そのあたりを北野武監督もわかっているのであろう。ここでは甲賀忍者を登場させる。手裏剣だけでなく、忍者技が次から次へとでてくる。接近戦ではカメラワークが冴える。

「座頭市」でタップダンスを踊ったのと似たような感じで、甲賀忍者にコンテンポラリーダンスを踊らせる。こんな感じが好きだ。徳川家康には伊賀忍者服部半蔵を警護に就かせる。次から次へと徳川家康の影武者を登場させるところも面白かった。このあたりの配慮がすごい。


加えて、お笑いの要素も加える。そんなことありえないと思いながら、思わずほくそ笑む。

エンディングロールにリストアップされる協力者はものすごい人数だった。
その中でVFXの外人たちがものすごく多いのにも気づく。これだけの映画ができるだけのことがある。

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