山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

妖精の住む森、大室山ブナ林  平成22年2月6‐7日

2010年02月15日 | 丹沢・道志山系
 平成22年2月6‐7日
 
 去る2月11日(建国記念の日)、私の職場で『月と星と山の奏でる音楽会』なるスライド上映会兼音楽会を開催した。昨年12月23日に次いで2回目となるこの会は、自家性スピーカーを持つAVオタクDr.Hと、音楽曲、特にピアノ曲に関してはものすごく詳しい音楽オタクDr.I、そして山&写真オタクの私がタッグを組んで、職場の4階会議室を借りて行なった2時間の会である。前回はあまり宣伝しなかったため少ししか人が集まらなかったが、今回は宣伝効果があって50人ほどの来場者を集めることができた。その時に選んだ曲のひとつが「となりのトトロ」、ジブリの曲である。この曲に合わせるイメージとして、「妖精の住む森、丹沢ブナ林」を想定していたが、足しておきたい画像があった。それが今回撮影に行ったブナ林の空に輝く星、そして雪のブナ林を照らす月の画像である。

    途中のあずまや  雪はくるぶしほど.

 夏場はそれほど大変ではない大室山の登山だが、冬になると雪がある。しかもこの日は数日前に雪が降り、冬型の気圧配置で、強風が吹き荒れる日だった。空は雲が多くて好天とは言えないが、明日は晴れの予報だ。どこから登るかいろいろ考えたが、甲府から最もアプローチが近く、手前の加入道山に避難小屋がある道志の湯からのルートを選んだ。以前にも歩いており、様子がわかっていることもある。他力本願、雪道のトレースを期待して、道志の湯から歩き始めたのは12時50分とかなり遅い時間だった。予想通り、雪の中にしっかりとしたトレースあり、白石峠分岐の直下でやや足をとられる積雪はあったものの、順調に3時半、稜線の白石峠分岐に到着した。ここから加入道山まではほんの15分か20分ほどだが、ここからトレースがだいぶ細くなってきた。加入道山山頂は膝まで埋まる雪ズポズポの状態、そして誰もいないだろうと思って避難小屋の扉を思い切り開けると・・・あっとびっくり、まだ4時前なのにヘッドライトを点けた人が扉のすぐ向うで食事をしているところだった。それもそのはず、この小屋は窓がなくて扉を閉めると中は真っ暗な状態になるのだ。さらに奥にツエルトが張られていて、計3人の人が休んでいた。本日ここに宿泊する人たちだ。この先は誰も行っていないらしい。悪天候ならばここに宿泊することを想定していたのだが、夜中に出たり入ったりしていると他の人たちに迷惑になってしまう。一人で先に進むことにした。

    眼前に迫る大室山(左)と雪の丹沢の山山  加入道山から.

 加入道山から先は全くトレースがない。ちょっとした吹き溜まりでは腿まではまってしまう深い雪だ。夏道なら15分で到着する前大室山まで40分もかかり、ここで4時50分、日没になってしまう。ここから大室山山頂までは夏道で1時間、とすると、この雪をかき分けて進むと約2時間かかる。到着はすっかり暗くなった7時になってしまうだろう。体力はまだ残ってはいたが、ここは無理せずに前大室山の雪上でテント泊にした。このあたりにも大きなブナの木がたくさん生えている。

    丹沢の夕暮れ  富士山の右に日が沈む.前大室山から.

 強風に煽られるので、風を避けるようにして大きなブナの根元に、ブナの木に抱かれるようにしてテントを張る。おかげで風からはだいぶ守られて夜を過ごすことができた。日没を見届けた後、テントの中で夕食をとり、早々にシュラフ2枚を被って寝る。この夏用シュラフと3シーズン用シュラフを重ねて寝るシステムは、前回金ヶ岳山頂で試したがかなり暖かい。この日の夜の気温は-15℃くらいだったが、シュラフカバー無し(置き忘れてきた)でも快適に寝ることができた。

    森の上に昇るオリオン座  風で木の枝が揺れ,ぶれて見える.


    ブナの林の向うに見える東京都の灯り

 睡眠薬を前回のテント泊で飲み切り、この日はなかなか寝付けないまま夜が更け、未明2時となる。もう冬の大三角形が西に沈んで行く時間だ。テントから置き出して空を見ると、オリオン座はもう西の空に沈むところだった。風で木の枝が揺れ、良い位置に冬の大三角形がおさまらない。それと、何故かこの日は15mm fisheyeレンズのピントが合わない。悪戦苦闘しているうちに冬の第三角形は沈んでしまい、続いて赤くて明るい火星が西の空に傾いてゆく。そして午前3時、いよいよ月が昇り始める。下弦を1日過ぎた月だがかなり明るくて白く優しく輝く月だ。森の雪原に木々の長い陰が棚引く。風が無ければ、木々の枝がブレずに優しい月影の写真になったであろうが、残念ながらこの日は15~30秒の露光時間では枝がブレたボケたような写真になってしまった。寒いのでテントの中とカメラの立ててある場所を行ったり来たりしながら、そのまま夜が明けてしまう。

    星の降る森  木を横切るオレンジ色の星が火星.左下に見えるのは富士山.


    ブナの森に昇る月


    月光照らすブナの森  優しい月が森を照らし,木々の影が雪原に棚引く.


    月光照らす森  大きなブナの木に抱かれるようにして張ったテント.


    星空に向かって  左の木の中に北斗七星のヒシャクの部分が隠れる.並ぶ木の中央下に光るのが北極星.星に向かって触手を伸ばすブナの木のイメージ.

 夜明け前に早めの食事をとり、足元が見えるようになった6時半から大室山を目指す。前日と同様の辛い1人ラッセルが続く。1時間半ほど進んで大室山山頂直下の富士山の眺望抜群の場所に到着したところで大休憩、存分に富士山を撮影する。休んでいると昨日の避難小屋泊まりの人1人が登って来た。本日は犬越路のほうに縦走するらしい。山頂まで着いて行こうかとも思ったのだが、この場所からの眺望で満足し、山頂は踏まずに下山した。

    林の向うの夜明け富士


    大室山から見る冬富士  丹沢山系からは夕暮れの富士が良いが,朝の富士もまた良い.

 前日避難小屋に宿泊した残り2人はそのまま下山したらしく、11時に加入道山避難小屋を覗いた時には別の若者2人組が休憩していた。順調に下山し、12時15分、無事駐車場に到着。眠い目と体を起こすために道志の湯に立ち寄ったが、眠気は全く醒めず、(毎度のことながら)疲れきった体で甲府に戻った。

    林の向うの朝富士  かつてはこういう木が邪魔でしょうがなかったが,最近はこういう木の入った景色もありかなと思うようになってきた.

 上映会での「となりのトトロ」に今回の映像を何枚か使用し、決して満足できる映像ではなかったが、『妖精の住む森』のイメージは十分に伝わったのではないだろうか。かつては山の上の眺望と星、月の組み合わせでひたすら撮影してきたが、今回のようにこの曲に合わせてこういうイメージで、という撮影も意識的に行なえるようになってきた。また撮影の幅と、写真の面白さが増してきたと感じる。
コメント (2)
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