月日の流れは早いものです。つい先日お正月がすんだと思ったらもう4月4日です。まったく私的なことですが4月4日は妻の誕生日です。そこで妻が好きな文学の中から今日は宮沢賢治の童話に関することを書きたいと思います。
筑摩書房の宮沢賢治全集第十巻には賢治の作品が全て集まっています。折々気楽に読んでいる全集です。
数多く賢治の作品を読んでおるとある考え方が下敷きになっているのが分かります。
それは「この世の全ての人が幸福にならなければ自分は幸せになれない」という考えです。この考え方を実行しようとして、真面目に生きて、死んだのです。
岩手県花巻で1896年(明治29年)に生まれ、1933年(昭和8年)に亡くなりました。享年38歳の短い人生でした。
幸せは何か?どうすれば東北地方の貧しい農民が幸福になれるのか?彼はいろいろな事を実行しました。
彼の文学作品はその悩みながらの生から滴り落ちる清冽な水の雫のようなものです。
膨大な数の彼の童話の中で私の好きな童話は、注文の多い料理店、銀河鉄道の夜、風の又三郎、オッペルと象、ドングリと山猫、よだかの星です。
数は限定はされますが非常に独創的で感動的な作品です。
彼の詩や歌や散文には心象風景がさかんに描かれています。しかし心象文学が好きな人以外にとっては難解な作品が多すぎます。例外は妹、トシの死を悼む詩、「慟哭」は読む人に真っ直ぐ響き心を強く打ちます。
しかし賢治の心象風景の混じった多くの作品は理解しにくいものです。
彼は周りの森や山、そして動物達を尊敬し、直接会話をするのです。それも心象的会話なのです。他人に分かる筈がありません。
それはさておき、「この世の全ての人が幸福にならなければ自分は幸せになれない」という考えが明確な童話をご紹介いたします。「よだかの星」です。この童話は彼自身の一生を短く描いた童話のようです。
醜い「よだか」という鳥が、その醜さ故に周りからいじめられるのです。毎日たくさんの羽虫を食べて生きていることに気づき、最後によだかは天に登って星になるのです。
星になる前後を賢治は次のように書いています。
・・・・もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした。ただこころもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、横にまがっては居ましたが、たしかに少し笑って居りました。
それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。そして自分のからだがいま燐の火のような青い美しい光になって、しずかに燃えているのを見ました。すぐとなりは、カシオピア座でした。天の川の青じろいひかりが、すぐうしろになってゐました。
そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。
今でもまだ燃えています。・・・・
そうです。宮沢賢治は星になって今でもカシオペア座のそばに燃えているのです。彼の考えが永遠に美しい光を放っています。
今日は宮沢賢治の童話に関して感じたことを書きました。
今日の挿絵代わりの写真は美しい星空の風景写真です。
それはそれとして、今日も皆様の平和とご健康をお祈り致します。後藤和弘(藤山杜人)
4枚の星空の写真の出典は以下の写真集です。