原田マハ著「キネマの神様」(文春文庫)を読みました。著者の映画と映画館に対する思いが詰まっている面白い小説でした。話は全くフィクションなのですが、映画や俳優の名前、実在する映画館などが登場して、映画に関する深い知識に裏打ちされていました。原田マハという作家は、引き出しが多く、その分野に精通しているので、細部にも説得力があります。映画音楽をタイトルにしたアルバム。
ART FARMER (アート・ファーマー)
WHAT HAPPENS? (Campi 1968年録音)
アート・ファーマーとフィル・ウッズ・グループが、集合してスタジオ・セッションを行い、それを録音したというアルバム。ラフな打ち合わせしかしていないと推測されますが、実力ミュージシャンが揃っているので、内容は飛びきりです。昨年発売された日本盤のCDを聴いていますが、レコードから音をおこしてあるようなので、日本盤でもいいのでレコードで聴きたいところです。
メンバーは、アート・ファーマー(フリューゲルホーン)、フィル・ウッズ(as)、マーシャル・ソラール(p)、アンリ・テキシュ(b)、ダニエル・ユメール(ds)。ファーマーとウッズは、それぞれ1968年にヨーロッパに渡っていて、ファーマーが渡欧した直後の録音です。ウッズは、ヨーロピアン・リズムマシーンを結成し、活躍を始めたところです。
曲は映画音楽、ジャズ・スタンダードです。ミシェル・ルグラン作「Watch What Happens」、ビリー・ストレイホーン作「Chelsea Bridge」、ケニー・ドーハム作「Blue Bossa」、ジジ・グライス作「Blue Lights」、トム・マッキントッシュ作「The Day After」、ジェリー・ボック作「Sunrise Sunset」(サンライズ・サンセット)の6曲。「Watch What Happens」は、ミュージカル映画「シェルブールの雨傘」中の曲です。
アート・ファーマーとフィル・ウッズの二人がリーダーといった録音ですが、すさまじいのはフィル・ウッズ(as)で、スピードに乗った即興演奏を繰り広げています。早いテンポの「Watch What Happes」や「Sunrise Sunset」においてウッズは本領を発揮していて、次から次へと目くるめくようなフレーズの洪水を聴くことができます。バラード「Chelsea Bridge」は、ウッズのフューチャーナンバーで、途中アップテンポになるのがスリリング。ファーマーも「Watch What Happens」などで暖かな音色でメロディアスなプレイぶりです。
【原田マハ著「キネマの神様」(文春文庫)】