青柳いづみこ著「ショパン・コンクール」という本が面白そうだったので、図書館から借りてきて、このゴールデンウィーク中に読みました。青柳さんは、ピアニスト兼文筆家。大阪音楽大学教授で、日本ショパン協会理事です。
ポーランドのワルシャワで5年に一度開催されるショパン・コンクールの2015年大会の模様をレポートするとともに、コンクールのあり方などにも言及していて、一気によみ通した面白い本です。綿密な取材の上に、技術的な観点も含めた演奏の評価、加えてこのコンクールの裏表が書いてあって、頗る興味深く読みました。
ショパンの演奏の仕方に「ロマンティック派」と「楽譜に忠実派」があって、評価が難しいことが指摘されています。そのようなことも背景にあって、審査員によって、かなり演奏の評価も異なってくるようです。著者はチャイコフスキー・コンクールにも出かけて聴いてますが、『今や実力は拮抗していて、コンクールはあらゆる意味で相対的になっている。』と記しています。
コンサートやCDの演奏者紹介には、なになにコンクールの優勝とか入賞などという経歴が書いてあるのが普通です。売れる音楽家になるためには、無くてはならない道筋のようにも思え、コンテストを受ける人のたいへんさが痛切に感じられるとともに、審査員の評価の方法も、常に検討されるべきだと思わされました。
本文とちょっと離れた話題を取り上げたコラムも面白く、例えば、2015年のショパンコンクールのファイナリストたちの理想のピアニストは、マルタ・アルゲリッチ、グレゴリー・ソコロフ、クリスティアン・ツィメルマンといった個性派のようだと記してありました。
【Arthur Rubinstein Plays Chopin】
本書を読みながら、アルトゥール・ルービンシュタイン(1887年~1982年、ポーランド出身のピアニスト)のショパン演奏集「Plays Chopin」(CD10枚組)を流していました。往年の定評ある演奏で、レコードも持っています。
音楽コンクールを題材とした恩田陸さんの長編小説『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)が直木賞と本屋大賞を受賞し、ベストセラーになっているようなので、そのうち読んでみたいと思います。