「英国マンチェスター郊外のストックポートで暮らす、ホームズ家の物語。家の修理工のピーターと妻アリス、彼らの二人の息子、そしてピーターの父と母。ピーターの長男アレックスに恋人が出来、そのことに15歳の弟の胸はざわめく。また、ピーター夫婦とその父母たちは小さな不満を感じながら生活をしている。そんな時、ある事故をきっかけに家族それぞれの思いがすれ違っていく。結びつきを失った三世代の家族の再生を描く─
昴と演出家・眞鍋卓嗣との初タッグで、今年の昴公演のテーマ「家族」を映す今作に挑みます。」
昴と演出家・眞鍋卓嗣との初タッグで、今年の昴公演のテーマ「家族」を映す今作に挑みます。」
サイモン・スティーブンスの芝居を観るのは「彼方からのうた」(限りなく低い「愛」のハードル(1))に次いでこれが2回目。
「広い世界のほとりに」はかなり長い芝居で、ドラマティックというわけでもないので、刺激を求める人はちょっと退屈するかもしれない。
テーマは結構難しく、私もちょっと自信がないのだが、「家族、恋人などの人間関係のレジリエンス」ではないかと思う。
ネタバレになるので、ストーリーは詳しく書けないのだが、ホームズ家は以下のとおり、一旦みんなバラバラになってしまう。
・ピーター・ホームズ:江崎泰介 ・・・家長としての孤独の中で、妻の浮気を疑って苦しむ。
・アリス・ホームズ:落合るみ・・・夫と上手く行かない上に事故で息子を失い、 知り合った男と親密な関係になる。
・チャーリー・ホームズ:金尾哲夫・・・老いのためか暴力的な言動が増え、妻を苦しめてしまい、さらにガンの疑いで検査入院する。
・エレン・ホームズ:姉崎公美・・・長年チャーリー一途に尽くしてきたが報われず、息子(ピーター)の待遇を巡って嫁(アリス)とも対立してしまう。
・アレックス・ホームズ:笹井達規 ・・・恋人のサラと一緒に突如家を飛び出してロンドンで暮らし始める。当然、母を始め家族は激怒する。
・クリストファー・ホームズ:福田匡伸 ・・・アレックスの弟で、兄に恋人(サラ)が出来たので喜びに浮足立つが、交通事故で亡くなってしまう。
・サラ・ブラック:賀原美空・・・アレックスの恋人で、彼と一緒にロンドンに駆け落ちするが、滞在先が火事で全焼して住まいを失う。
現実の社会では、ピーターとアリス夫妻、チャーリーとエレン夫妻、クリスとサラは、離婚又は別離という結末に至ることが多いだろう。
だが、この芝居では、3組のカップルは、関係を修復出来てしまうのである。
登場人物たちは、一旦「広い世界のほとり」までたどり着いたものの、結局もとの場所に戻って来ることを決断するという行動をとるという点では一致する。
この内面の振り子運動こそが、この芝居の要であると思う。
私見では、おそらく言葉では表現するのが極めて難しいところであり、役者の実力が試されると思う。