「アカデミー賞4冠を獲得した映画「ボヘミアン・ラプソディ」(2018)で再び注目を浴び、以後2度にわたる来日公演も話題を呼んだ世界的ロックバンド、クイーン。現代バレエ界の巨匠モーリス・ベジャールが、そのクイーンの音楽を使って、ロックとバレエを融合させた奇跡のステージが「バレエ・ フォー・ライフ」です。」
前回:2021年の来日公演でも上演された演目。
もちろんどの曲も印象深いが、前回最も強烈な印象を残したのは、”Radio Ga Ga” だった(第三のステージ)。
今回も同様の印象を抱いたのだが、今回、ソロを踊るのは岸本秀雄さん。
2018年に東京バレエ団からBBLに移籍した方だが、ほぼ休みなく飛び跳ね続けるため相当なスタミナを要求される役を見事に演じ切って喝采を浴びた。
ところで、”Radio Ga Ga” の特色は、私見では、ソロとコール・ドが対等の比重で演じられることと、2人のソロの間における、またコール・ドの内部におけるコリオの分節化にあると思う。
観ればすぐ分かると思うのだが(Ballet For Life Maurice Béjart 1)、2人のソロのダンサーが舞台上で伸びやかに飛び跳ねたり這いずり回ったりする一方で、箱(ラジオ?)の中で20人近いダンサーが万華鏡のように蠢くという、なんとも言えないコントラストが真っ先に目に入る。
次に、ソロの2人を見ると、一人はダイナミックに飛び跳ねているが、もう一人は地を這うような苦しそうな動きで、コントラストが明瞭である。
さらに、箱の中を見ると、通常の演目のように「全員同じコリオ」をしているのではなく、一人一人違う動きをしているのが分かる。
要するに、「『個v.s.全』又は『動v.s.静』という二項対立の多重構造」が浮かび上がるのである。
若干ややこしいが、ここには、
・ソロv.s.コール・ド
・ソロ(飛ぶ)v.s.ソロ(這う)
・コール・ドv.s.コール・ドの各メンバー
という、少なくとも3つのレベルにおいて二項対立が現れていることになる。
さすが哲学者の子!