「二、陰陽師(おんみょうじ) 夢枕獏の大人気作、装いも新たに登場
〈大百足退治〉
武勇の誉れ高い藤原秀郷。近江の国、琵琶湖にほど近い三上山に出現するという化け物を退治するためやって来た秀郷は、化け物の正体である大蜈蚣の魂魄と対峙し…。
〈鉄輪〉
朧の月夜、源博雅が吹く笛の音を慕う徳子姫は、やがて愛する男に裏切られ、蘆屋道満の妖力により生成りの鬼と化していました。安倍晴明が呪の解明に乗り出し、遂には道満との対決が迫り…。」
武勇の誉れ高い藤原秀郷。近江の国、琵琶湖にほど近い三上山に出現するという化け物を退治するためやって来た秀郷は、化け物の正体である大蜈蚣の魂魄と対峙し…。
〈鉄輪〉
朧の月夜、源博雅が吹く笛の音を慕う徳子姫は、やがて愛する男に裏切られ、蘆屋道満の妖力により生成りの鬼と化していました。安倍晴明が呪の解明に乗り出し、遂には道満との対決が迫り…。」
続いては、夢枕獏先生の「陰陽師」に基づく「大百足退治」と「鉄輪」の2本立て。
(1)大百足退治
大百足の正体は、日本に長く住みながら、朝廷に服属しないため虐げられてきた民の恨みが凝り固まって生成した「魂魄」(原animus)。
龍宮に伝わる「青龍の宝剣」(第2のanimus)を手に入れた大百足の魂魄は、積年の恨みを晴らし、この国を魔界にすると述べて、藤原秀郷に襲い掛かる。
激戦の末、秀郷は「青龍の宝剣」を手に入れ、大百足を退治すると、祠の中から龍王の娘・永薙姫が登場する。
彼女は、琵琶湖の水底にある龍宮に住んでいたが、大百足に「青龍の宝剣」を奪い取られ、単なる身体(corpus)となって祠の中に閉じ込められていたのである。
これを聞いて秀郷が「青龍の宝剣」を姫に返納すると、姫は返礼として、父・龍王の秘蔵の「大弓」(軍事的な意味における第2のanimus)と、いくら取り出しても尽きることのない「米俵」(経済的な意味における第2のanimus)を与えた。
すると秀郷は、「米俵」は朝廷に献上して民への施しに充てるというので、これに感じ入った姫は、秀郷に「俵藤太(たわらのとうた)」という「名」(nome)を与えた。
・・・と、こんな風に、夢枕先生は、日本古来の
・「魂」(原animus)---「象徴」(第2のanimus)という分節
という思考と、17世紀以降の
という思考に基づいてストーリーを組み立てている。
決して(神武天皇の)「”Y染色体”の承継」などという、「目に見えないものの継続性」というところで勝負しているわけではないのだ。
以上のとおり、「大百足退治」にはポトラッチらしきものは出て来ないので、ポトラッチ・ポイントはゼロ。