Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

1月のポトラッチ・カウント(2)

2025年01月26日 06時30分00秒 | Weblog
 「【3】次々発覚する新事実。そして予想もしなかったスピード婚!
 実は、この女性は吉岡一味斎(よしおかいちみさい)の娘・お園。一味斎とは六助の剣術の師匠であり、彼は六助の人柄と能力を見込んで、娘の結婚相手にしようと決めていた。つまり、六助とお園は顔を合わせたことはないが、許嫁という間柄だったのだ。
 突然の思いがけない事実に戸惑いながら、まんざらでもない2人。それはそうと、六助はお園に一味斎の安否を尋ねると「父は同じ家中の者に殺害され、父親の敵を打とうとした妹も返り討ちにされました」と語る。悲しみにくれる2人に、奥の一間から声をかけたのはお幸という、さきほど六助に一夜の宿を求めこの家に通されていた老女。これまた偶然にも、このお幸は一味斎の妻、つまりお園の母親であったのだ。お幸は六助に夫の形見の刀を与え、お園と祝言させるのだった。

 「貰い子である女子がイエを承継する」というのは、おそらく、「神武天皇と今上天皇は全く同じY染色体」であると信じている人たちには、一生理解出来ない思考だろう。
 ここで作者(梅野下風・近松保蔵)は、こうした人たちに対するアンチテーゼを提示している。
 すなわち、一味斎は貰い子であるお園をイエの承継者に指名したし、六助は弥三松を我が子のように養育し、幸(お園の母)は「私を母だと思って下さい」と六助に懇願する。
 ここにおいて、生物学的親子関係(つまりゲノムの承継)が度外視されていることは明らかである。
 これに対し、悪役である京極内匠(微塵弾正でもある)は、ゲノム的思考(結局はレシプロシテにつながっている)から逃れられず、結果的に破滅してしまう。

 「実は、内匠はこの地で命を落とした明智光秀の遺児で、明智光秀の亡霊(中村又五郎)に引き寄せられたのでした。光秀は、この池に隠していた名剣・蛙丸(かわずまる)を我が子に託して、自らを滅ぼした真柴久吉への恨みを晴らしてほしいと託します。

 そう、内匠(あるいは弾正)の生物学上の父は明智光秀であり、光秀は、真柴久吉への復讐を内匠に託す。

 「【4】運びこまれた老婆の遺体。孝行息子のフリをしていた男は因縁の敵だった!
 折からここへ、杣(そま:きこり)の斧右衛門(おのえもん)が仲間たちと共に、母親の死骸を運びこみながら「この敵を討って欲しい」と懇願する。その死骸をよく見ると、なんと弾正が孝行したい母だと言い同行していた老女であった! 弾正は六助の優しさにつけ込み、斧右衛門の母を自分の母だと嘘をつき、六助に勝ちを譲ってもらうという計画を実行。用済みとなった老女を殺害したのである。しかもお幸の所持していた人相書と、お園が所持する妹の死骸に落ちていた臍緒書(ほぞのおがき:今でいう出生証明書)から、弾正こそ、一味斎を殺害した京極内匠という男であることがわかる。怒りにうち震える六助は、一味斎とその家族であり妻となったお園の敵討ちを遂げるため、衣服を改め、敵の後を追うのだった。

 ところが、久吉が許可した仇討ちによって、内匠は命を失うこととなる。
 ・・・というわけで、「彦山権現誓助剣」のポトラッチ・ポイントは、3人(一味斎、お菊と斧右衛門の母)を殺害した代償として内匠は命を失ったので、5.0:★★★★★。
 


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