毎年この時期は、「梅の花を観賞しながらハイキング」というのが恒例となっているのだが、昨年、ちょっとした異変があった。
梅林をちょっと登ると、あちこちに「クマ」と書かれた町役場作成の貼り紙がしてあったのである。
地元のタクシー運転手さんに聞くと、「このあたりは昔からクマはいないとされていたんですが、去年隣の市で大々的にサルの駆除をやったので、サルのテリトリーだったところににクマが降りてきたのかもしれませんね」ということであった。
私は、直感的にこの推理は当たっていると感じた。
「僕も見たことあるけど、クマが1匹木に上がっていて、サルが輪になって威嚇しているのね。どんぐりを食べているクマを。多勢に無勢なんだろうね。サルはすごい剣幕で怒っているの。今の時期、まだどんぐりが落ちてないから枝に上がるんです。サルが枝に上がったって、ちょっと飛べば隣の枝ですけど、クマはそれできませんから、上がった木を必ず降りてくる。」
どうやら、餌、したがってテリトリーを巡って、クマとサルはライバル関係にあるらしい。
いわば「熊猿(ゆうえん)の仲」である。
そうすると、サルが居なくなったのでクマが降りてきたというのは自然な推論である。
そう言えば、人間界でも、(梅林の山とは逆だが)電車の中で静かに読書に耽っていたところ、入ってきたマダムたち・女子高生たちが賑やかにおしゃべりを始めたので、やむなく隣の車両に移るサラリーマンの光景は、ときどき見かける。
こういう風に考えを巡らすうちに、なんだか私は、クマに一方的に肩入れしたくなってくるのである。