明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



配布されたばかりのアダージョの横溝正史は、顔形が捉えられずに難航してしまった。完成したと思ったら、修正を加え、ということはよくあることではあるが。この雑記には、芸能人じゃあるまいし、たいしたことが一つも起こらない日常など読まされても迷惑だろうから、できるだけ制作に関することを書こうと心がけている。完成、と書いてしまったら、数日のことであったら、とぼけて何もなかったかのようにしているが、連休をすべて潰した今回はそうもいかなかった。そんなこともあったし、別のシリーズも開始したい、ということもあって、今回の人物は少々早めに制作に入った。実はこの人物を作るのは2度目である。おかげで資料は手元にあるし、イメージは頭に染み付いているわで、スムーズにことが運んでいる。そんなわけで、早々に一山越えたという気分で、早い時間にK本に出かけた。台風云々ということもあり、客はまばら。誰もいない常連席に坐ろうとすると、カウンターの上で、小さな段ボール箱に収まっていた猫のオシマが私の顔に頬を寄せてきて、8センチの距離で見つめ合う。『クシャミするなよ』私の膝に前足をかけ、下に下りようかと躊躇している。私には猫の齢は判らないが、最近は流動食を食べさせている、という話も聞いていているから、数十センチの高さを躊躇する状態なのだろう。同じ動作をもう一度くりかえした。人に慣れないオシマにしては珍しいことをする。長いことはないのかもしれない。  結局常連は誰も現れず、そこそこ飲んで帰れば良かったが、私の順調な時の癖で、ポケットには制作中の人形の頭が入った状態である。立ち飲み屋に寄り、T屋に寄り、帰宅してさらに・・・。 明け方目が覚め、メールをチェックすると『誰か死んだの?』というメール。何のことだろうと、送信したメールを見ると『俺は生きるぜ』と送信している。なんのことやら判らない。こんなことは初めてである。もしかすると、オシマの今日の様子を想ってメールしたのか?それにしても件名が『どいつも こいつも』というのは、いったいどういうことなのであろうか。

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