明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



2時から始まるが、乱歩に持たせる煙草、下に置く灰皿、本2冊を配置しなければならないので、早めに向かったつもりが思ったより遠く、すでに関係者の挨拶が始まっていた。ここは99年の荷風展で荷風像を展示して以来である。あの時の内覧会では、安岡章太郎さんと写真を撮ってもらった。 乾杯の後、乱歩の令孫平井憲太郎さんにご挨拶する。憲太郎さんにはアダージョで宮沢賢治を作ったとき、夜空に銀河鉄道を走らせるため、岩手軽便鉄の模型をお願いして手配いただいた。 戸川安宣さん。メインビジュアルに使われた作品は、もともと東京創元社のムック本の仕事で、戸川さんの計らいで、乱歩邸土蔵内で撮影したものである。 当館館長でもあり、今回土蔵の乱歩にタイトルを付けて頂いた紀田順一郎先生。(『夜ぞ来たる』ポール・モーラン「夜ひらく」やブロムフィールド「雨ぞ降る」の連想とのこと)ポスターの評判が良いと伺う。思えば、東京創元社の紀田先生の著作の表紙作品を担当させていただいて以来のご縁だが、当初有り物の人形を使って、というのを紀田先生ご意向の荷風以外は、オリジナルで作らせていただいた。当時内容に即した人物を作り、“解釈”を見せられるような仕事を一度してみたかったのである。あの頃は合成を使わず片手に人形、片手にカメラの時代である。『古本街の殺人』の背景には戸川さん。  会場に展示された、煙草を手に寝転がって妄想する乱歩像と、乱歩のスケッチを基に制作した写真作品『D坂の三人書房』を記念に撮影。D坂は横に乱歩のスケッチが展示されていて感慨も深い。 会もひと段落すると会場には封も開けられていない『黒蜥蜴』や『怪人二十面相』が残っている。名張の中相作さんと空ける。二十面相はその人物同様少々甘く、悪党加減、酒、ともに黒蜥蜴に軍配。 その後中さん、新保博久さんと、近くの喫茶店、渋谷のラーメン屋でビール。新保さんには以前から気になっていた、カラーで写された乱歩の写真の存在を伺うが、何かの会で写された写真が1カットあったかどうか、だそうである。三重県名張の中さんには、東京下町酒場御用達の三重の焼酎『キンミヤ』のことを伺ったが、中さんすら存在を知らないと訊き驚く。県民に内緒にする理由があるとは思えないが。 その後隅田川を越えて木場に戻り、安心してT屋にて痛飲す。

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