明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



ようやく決まったアダージョ10月配布号の特集人物だが、我慢しきれず先走って写真集を入手し、写真資料的には、なんとかなりそうだが、またまた問題は背景である。この人ばかりは現代的な匂いを避けたいところなのだが、そもそも東京など、震災、空襲により、少々風情があると思っても、おおよそ戦後に作られた風景ばかりで、作りが安っぽい。もっとも、それが不満かというと、東京というところはそうしたものである。私は東京オリンピック以降、すっかり不感症になってしまい、東京の風景がどうなろうと知ったことではないのだが、街歩きフリーマガジンで背景が必要となると、そうもいっていられない。誰々と何処そこを歩くと、ただその通り、にしただけでは、つまらない表紙になることは目に見えている。時には頓知に近いような奇策をもって対処しなければならない。 以前の、片手に人形、片手にカメラで街を行く撮影方法は、創刊二号の向田邦子で早々に諦め、いかに野暮臭い現在の東京、さらに都営地下鉄駅近くに人物像を馴染ませ表紙にするか、頭を悩ませているわけである。今号の『坂本龍馬と大手町を歩く』は江戸城の大手門にたたずませ、中にハトバスのガイドや黒船ならぬ外人のカップルなどをウロチョロさせ、本来日本の将来を見詰めているはずの龍馬の表情が、『イメージと違っちゃった』。と見えたら幸い、といささか皮肉を込めてみたのだが、それで良かったのかもしれないが、あまり伝わらなかったようである。ブームの前であったら、いくら武田鉄也が尊敬する人物でも、多少ヨイショしたのであるが。 というわけでYである。今月25日に配布されるTが、特集地域に少々ご迷惑をかけており、やり過ぎてしまったので、次号はYだけに、シミジミと穏やかにしたいところなのだが、そんな場所が果たして見つかるのであろうか。

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