二日ほど実家に帰り、渡辺温の頭部の仕上げに取り掛かっていた。オキュルスより送っていただいた雑誌の、小さく不鮮明な画像をたよりに制作を続けていたが、資料がないならないで、誰も生前の姿を知らないわけなので、自分なりのイメージを付加して完成させれば良いと思っていた。 ほぼ完成した頭部を持って来て、実家で仕上げの二日目。もうそろそろ良いだろう。今は朝の5時すぎであるから、正確にいえば今日。家に帰って胴体部分の制作に入ろう。そう思ってたまたまネット上の映像を見ていたら、渡辺温の生写真、もしくは複写された写真が写った。それは雑誌に掲載された物と同じカットであったが、顔が1センチもない印刷と違ってちゃんと目鼻がハッキリ写っていた。それは私が想像して制作を続けていた顔とは違っていた。 つまり制作するには、現在ベストの状態ではないということを知ってしまったわけである。印刷物でなく、複写された写真を拝借して作れば、もっと良い渡辺温が作れることは間違いがない。ただ今からでは時間がない。さっきまでようやく頭部が完成したと思っていたばかりなのでなんともいえないが、温像の完成はまたの機会にし、『渡辺温オマージュ展』には、プリント作品2点ということにしたいと思っている。 渡辺温像を期待されていた方がいたら大変申し訳ないが、納得できないものを見ていただくわけにはいかない。それが怖くて連日朝まで制作していた。
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