明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



舞台となる神社がある街は、比較的大きな漁港である。行く前にネットで知っていたが、駅に幟が立っていたので、町起し的な名物を食べようとしたが、どこも開いていない時間であった。日が翳るまで時間をつぶし、なんとか探して食べることができた。商売気がなく、本気で名物にしている感じではない。こんな場合、不味いなら不味いで土産話にもなるが、ただ普通に美味しく、結果、この名物の話は誰にも話さずじまいである。  鏡花が神社の描写を忠実にしていて驚いたことはすでに書いたが、おかげで連日の撮影でヘトヘトであったが、石段の上り下りは汗だくになりながらも楽しくてしょうがなかった。 しかし神社の上から見下ろす風景は、かつての漁師町というわけにはいかない。そこで別な場所で撮影した風景を合成した。まず神社の石段下に漁師が大魚イシナギを担いできた道を作り、河童に驚いた漁師が置き去りにしたイシナギを起き、道の先に鳥居を立て、さらにその道に交わる道を作った。鏡花は石段の長さこそ書いていないが、いやに細々と風景を説明していて、その分、俄かには様子が頭に浮かばない。それでも何十回も読んだおかげで、かなり正確な風景になったと思う。 さっそく一緒に神社に行った友人に画像を送った。二人で名物求めて歩き回った町は跡形もない。これを見て驚くのは現場を知っている彼だけで、他の人は特になんでもない、ということでないとならないわけである。

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