明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



漁師の若者は近所の町会の神輿担ぎの2人にお願いした。丸太に血だらけの大きな魚をぶら下げる。当初はフンドシ姿に抵抗がないだろう、ということで深川のお祭り男を選んだのであるが、当たり前といえば当たり前だが、むしろ丸太を担ぐ姿が堂に入っていて画になっている。鉢巻きも昨日今日ではこうはいかない。 怪獣映画でも最初に怪獣と遭遇する人物のキャラクターは重要である。そもそも河童の復讐譚であるが、河童を直接目撃するのはこの2人だけである。担ぐ姿が肝心で参加してもらったのだが、2人の顔があまりに良く、出演場面を増やすことになった。粘土で作った丸太を合成して完成。マンションの駐車場や屋上で撮影したが、完成作品を見て一番驚くのはこの2人であろう。一人は大学でラグビーをやっていたそうだが、河童に驚いて逃げる姿を、いかにもな鈍足に変えてしまった。申し訳ないことではある。 思えば担がれるイシナギの穫れたてを送ってもらってから、ずいぶんかかってしまった。最初に東北の鮮魚店のサイトを見つけ、撮影の際には、と安心していたら連絡がとれなくて慌てた。更新された日時を考えると震災の影響であることは明らかである。そして二軒目を見つけた。そこは毎日入荷した魚の画像をアップしていた。イシナギといってもあまりにも大きな魚であるし、鏡花も作中いっているが、一般人が簡単に目にする魚でもない。粘土で作ることも考えたし、編集者はスズキで代用したらどうか、といっていたが、小さいとはいえ、本物にこだわってよかった。鏡花は異常な潔癖性である。そう思うと、鏡花の描くところの河童の生臭いベトベト感や、血をしたたらせた魚の描写は、だからこその重要なポイントと考えていた。血糊こそ私のお手製だが、魚の生々しさは物語にひと味加えてくれているはずである。よく見たら、目玉に撮影している私と、屋上の手すりが写り込んでいたので修正した

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