明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



朝から翁の被る烏帽子を作る。最初に紙で失敗し、2度目は布の質感がいまいち。結局小津安二郎のマフラーと同じく、またBVDのTシャツである。馬鹿の一つ覚えのようであるが、人形のスケールと布の素材感を合わせるには、どうしても柔らかい布を使うことになる。BVDなら豊富にあるし。というわけである。加えてアクリル絵の具でボテボテと染めることによりごわついて、紙や布に漆を塗るという烏帽子の質感に近づいた。油差し、灯心、火打ち袋はすでに揃っている。 今回は作者の鏡花に代わり柳田國男が河童の三郎と相対する。明日、晴天でなければ屋外で撮影するつもりである。まず見開きページ。横向きで向かい合うカットから始めたい。 河童はニホンザルと蛙と亀が混ざった物、というイメージで作ったが、妖怪は神の零落した姿であると考える柳田が、慈愛の眼差しで三郎と向かい合うのは面白いと思うのだが、一方、極度の潔癖性の鏡花が、小さいとはいえ90センチもある、ヌラヌラベタベタ生臭い河童と向かい合い、慈愛の眼差しで、というわけにはいかないであろう。その代わりといってはなんであるが、先日思いついた、鏡花先生の大っきらいな蠅を三郎にとまらせるというのは本気である。ワンポイント的にどこか可愛らしく見える場面で実行するつもりである。 それにしても先日まで蠅を撮影することになるとは思いもよらなかったが、自分が思いもよらなかった物を作ったり撮影する事態になる。こんなに喜ばしいことはない。私はなんとかして昨年、こんな作品にしよう。などと考えていた私を打倒したいのである。

かあかあ。ひょうひょう。

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