明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



3割5分はこの場面を作りたいがため、といって良いであろう。ようやく柳田國男と河童の対面シーンである。私にしてみれば三国連太郎と佐藤浩市の共演を演出しているような気分であるが、両者を同じ土俵に上げる貴重な機会である。本来、柳田登場は出版までサプライズとしておくべきだったかもしれないが、周囲三百メートル程度の範囲で暮らしているような人間のブログである。多少珍しいことでも書いておかないとならない。 私はついにこの日が、という気持ちもあり、生き別れの親子対面のような気分になっていたが、そうではない。河童が娘の尻を触ろうとして、河童の存在を知らない人間にたまたまステッキで腕を折られてしまう。そこで憎っくき人間どもに仇討ちを。勝手なことを願い出る場面である。翁は“こなた道理には外れたようじゃ、無理でのうもなかりそうに思われる”。それは道理からはずれているだろう。しかし翁も異界の住人。河童には甘い。姫神様にお伺いを立ててやろう。ということになる。まず禰宜の出で立ちの柳田國男登場。登場しようとしているところでまだ透き通っている。とうとう私は柳田國男を異界の住人にしてしまった。 私はかつてジャズやブルースの人形を作っており、始めて人形を撮影した写真を展示するにあたり、過去に実在したミュージシャンを作って撮影してみた。なかなか面白かったが、生身のミュージシャンを撮影した写真は腐る程ある。十字路で悪魔と取引するブルースマンならともかく、わざわざ作り物でやったところで表現としての発展性はなかったろう。どうせなら作り物でないと実現しない世界を手掛けたい。というわけで、柳田と河童の対面が始まる。

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